世田谷の一軒家で温かい両親のもと、何不自由なく暮らしていた一人っ子の少年・奥山圭輔は12歳の冬、失火による火災で両親を亡くして天涯孤独となる。
その後圭輔は遠縁の底辺一家・浅沼家に財産目当てで引き取られ、一家の母道子と息子達也(ど畜生)にいじめ抜かれる思春期を送ることに。
13年後、艱難辛苦の末浅沼家と縁を切り新米弁護士先生となった圭輔の元に、殺人事件の容疑者となった達也から弁護依頼がやって来る。
「俺はやっていない、無実だ」という達也の弁護を、圭輔は苦悩しつつも引き受けることにするが・・・
(以上、第二部序章まで)
達也がごみ!
達也がクズ!
達也がど畜生のビチグソゲボ野郎で目が離せない!!!
ということで『代償』を読み終わりました。とっても面白かったです。
癒せぬ罪悪感を抱えて生きてきた青年が、少年時代のもっとも忌まわしい時間を共有した相手と交わす憎悪、悪意、因縁試合が圧倒的な筆力に支えられながら300Pに渡って繰り広げられます。
本作の悪意の塊こと達也が周囲に撒き散らす、汚臭も漂わんばかりの禍々しい悪意は心底おぞましくて気持ちが悪く、見ていて何度も「達也きもい!!」「達也ほんと死んで!!」と思わずその死を願わずにはいられないほど。
そんな悪魔小僧・達也の負のエネルギーに温室ぬくぬく育ちぼっちゃんの圭輔が敵うはずもなく、成すすべもなく悲劇に飲みこまれていく一部は不穏と緊張と不快指数MAXで一気読み必至。
ほんとね、この気持ち悪さが癖になるんですよ。
続く二部に関しても、達也の外道ぶりはいかんなく発揮され、達也のその邪悪クズぶりに絶望しながらも魅了され、始まった裁判におけるドラマの急展開は「サスペンスだけでなく法廷ものまで上質とか・・・!」とすっかり本作に胸をわし掴みにされて夢中で読み進めていただけに、、、
オチがなぁ。。。。。
なんかなぁ。。。。
いや、面白かったんですよ。
序盤からさいこうだったし中盤の盛り上がりの瞬間最大風速は目を見張るものがあったし、終盤の手前までもその気持ちの盛り上がりをキープして進めていっただけに、ラストの中華料理店での一幕は盛り上がりに欠けると感じた。
なんだかなぁぁぁぁあああああ。
作者は最後達也の扱いに困ったのだろうか、というようなラストの達也の目立たなさに不服が残る。
やっぱり達也の怪物性ありきの物語だっただけに。
『果てしなき渇き』の藤島くらいみじめに悲愴に死んでほしかった。
全体的に素晴らしかったが故に逆に不服が残ったという。
あと不服と言えば、
・圭輔の達也に対する複雑な怨恨をもっと掘り下げてほしかった。
圭輔が基本的にいい子すぎる。
あんな生い立ちなのだから、もっと複雑に歪んでいたり、達也を殺したいほど憎んでいたりすさまじいPTSDを抱えていてもいいはずなのに、その辺がわりとライトな印象。
一部から13年飛んで二部へと移った時にも、あまりに普通の青年へと成長しているせいで「あれ、君、普通やね・・・?」と拍子抜けしてしまった。
それともあくまで圭輔にとって達也とはのび太におけるジャイアンみたいなものだったのか。
そんなばなな。
あと、
・紗弓と達也に肉体関係がない設定に違和感
ええ・・・達也のキャラ上やってない方がおかしくねぇ・・・?
と、こまかすぎるけどここがなんだか不自然で腑に落ちない。
むしろやってて紗弓が達也に骨抜きになっていてラストを迎えた方が女同士の憎悪がより濃くなって面白かったのでは。
もしくはこれは「主人公が好意を抱いている女の子は敵キャラとセックスなんかしていないよ(おまんこ清いよ)」というようなどうでもいい男のこだわりなのだろうか。
くそくだらねー。
そしてこの『代償』Huluで映像化しておりまして。
小栗旬氏が主人公の圭輔を演じたそうですが、むしろ達也の方が似合ったのでは。
達也役は高橋努氏。全然イメージではない。
しかし私の中で達也は、
・大柄で筋肉質で金髪を短髪にしており精悍に見える
という設定から脳内再生ではずっとエグザイルだったのでした。