ごんブロ

だいたい月に一度、本や映画の感想を書きます

新しい傘と久々に胸を刺し貫かれた漫画「1122」/渡辺ペコ

 

梅雨に入る前に新しい傘を買いました。

 

うすうす気づいていたけれど、私はけっこう傘が好きで、ここ数年は割とひんぱんに買い替えたり揃えたりしています。

 

半年前、最愛だったイギリスブランドのおしゃれビニール傘が使って1年未満で留める部分が千切れてごみに出してからは「やっぱり傘は見た目>機能性やで!」と思い直し、『閉じた時、濡れた面が内側になる』仕組みの傘をどうしても試してみたくてネットで買ったのですが、普通の傘と見た目がだいぶ違うので電車の中などで周りからは「なんだその傘は」という目で見られるし、ちょうど傘を開くところを隣で見ていた通行人(居酒屋の客引き)から「あの傘すげぇwww」と言われたこともあり、小雨くらいでは積極的に使わなくなっていたのです。(大雨時には出動いただく。手や服が濡れないのはやっぱり快適)

 

ということで今回買った傘は小雨用。ネイビー色に細い赤と白のストライプが入った、ユニセックスな柄の傘です。合わせて真っ赤なレインバレエシューズを買ったので、次の雨の日が楽しみ。

 

 

◎ 「1122」/渡辺ペコ

 

1122(1) (モーニング KC)

1122(1) (モーニング KC)

 

  

1122(2) (モーニング KC)

1122(2) (モーニング KC)

 

 

わたしたちは いびつな夫婦かもしれない

でも それでもいい

自分で選んだ人と

自分たちのやり方で 家族になるの

引用元:「1122 1巻」/渡辺ペコ

 

久々の大ヒット。

 

「1122」と書いて「いいふうふ」と読む。

外で恋人をつくってもよいルールの(※夫側に恋人がいる)夫婦の話・・・ということはうっすら知っており、「どっかで聞いた設定だなぁ」「かんじんの夫がぜんぜん好みじゃない絵だなぁ」「つうかそんなん破たんするに決まっとるがな」と読まないでいたのですが、大好きなブロガーさんが地味に推していたり大好きな作家のこだまさんが新刊の3巻をめちゃくちゃ楽しみにしていることから読んだのですが、もうめっちゃくっちゃすごい漫画でした。さいこう。

 

 

【1〜2巻あらすじ】

 いちことおとやの夫婦は結婚七年目の子無しの夫婦。

共働きで家事分業で会話も多く周囲から見てもとても仲が良いけれど、実は二人は性欲の衰えからセックスが嫌になったいちこの希望でセックスレスとなって久しく、一年前からはおとやにはいちこ公認の恋人がいる。

恋人との恋愛によってどんどんきれいになっていくおとやを見ている内に、いちこは「自分の人生からこのままセックスがなくなるのは寂しい」という己の思いに気づくが、すでにおとやはいちこを抱けなくなっていて・・・

 

直接的なセックスの描写は無いのに、ここまでセックスについて深く掘り下げた漫画があっただろうかと思うほど身につまされる、セックスをこじらせたカップルのお話し。

 

性欲ってなんなのだろう、セックスってどこまで大事にすればいいのだろうか、夫婦はどこまで相手の性欲に付き合う義務があるのだろう、セックスしなければ夫婦じゃなくて家族なのだろうか、こんなにも大好きで人生にいなくてはならない存在なのに、セックスしないだけで他人となってしまうことも有りうるなんて、夫婦って、家族ってなんなんだろう、そんな答えの出ない問いが読んでいる間じゅうぐるぐる頭の中で渦を巻いて、やり切れなくて苦しくて切ない。読んでいてひりひりしてジワジワして主人公のいちこが胸の真ん中にドンって棲みついて居座ってくる感はんぱない。なんかもう気づいたら目に涙が浮かんでくるんだけど、色んな思いが複雑すぎてどの感情がそうさせているのか分からないという。

美月さんも可哀想だしおとやんは優しいしおとやんの家族はいい人達ばかりだしいちこの身の上は胸が裂けんばかりに切ないしでもう。

個人的にはおとやのお姉さんが自分の離婚について「積み重ねた大事なものもぜんぶなぎ倒しちゃいそうだったから 別れた時はホッとしたよ」と言ったところでなんか色んなものがあふれ出して泣いたっていう。せ、切ねぇぇええ〜〜〜。(※離婚したことなければ結婚したこともない

 

 

いちこは栃木のクソみたいな閉塞感あるど田舎でDV酒乱クソ親父に殴られる母親に虐められながら育って、親父が死んだ今でも母親の事が大嫌い。きっとめちゃくちゃ努力して今の東京でフリーランスの仕事をして夫と暮らす日々を手に入れた。おとやのことは大好きで、たぶん死んでやり直すことになってもまたおとやを選ぶのではないかと思われるほど、おとやは彼女の人生の宝物のような人なのに、セックスし続けてあげることが出来なかった。

セックスしてあげられない負い目から彼が外でセックスしてくることを容認したいちこだったが、実際におとやが恋人をつくって恋愛しているのを見ていると自分たちの関係性が根本から揺らいでくるのを感じてしまう。

セックスしなくても一緒にいたいくらい好きな人なのに、セックスしないことによって心が離れてしまった。でももし我慢してセックスし続けていたら、セックスすることでいちこの心はおとやから離れていって、こんなにも離れがたい人間ではなくなっていたかもしれない。皮肉にもいちこにとっておとやは、セックスしなくなったからこそ掛け替えのない夫になった。

セックスしたいくらい好きな人にその気持ちを「風俗で発散させてほしい」と傷つけられ、以降はセックスレスなら離婚したっておかしくないのに、それでもずっと一緒にいちこと暮らしているおとやは、傷つけられてもセックスしなくても一緒にいたいほどいちこが好きだけど、その好きがいつまで続くかは分からないわけで。

特にいちこが他の男とセックスしたことがバレてしまったらもう、この関係は終わりじゃないかと個人的には思うのだけど。

 

も〜〜〜3巻どうなるの~~~~~。

 

ちんぽの入らない夫と20年以上暮らしているこだまさんの心に刺さるのもうなずける、セックスと家族のお話し。

相原夫妻の行き着くところを見届けないうちには死ねない。