先月の中頃のこと、なんだか涼しくなったなぁと思いながら駅のホームで電車を待っていると、ふっと鮮烈な金木犀の香りがしました。
その頃はまだ金木犀は咲いておらず、あたりを見回しても花屋の袋を提げた人の姿がいるわけでもなく。まるで幻のようなひと時でした。
練り香水の中にはとても再現度の高い金木犀の香水があると聞きます。もしかしたらあれがそうだったのかもしれません。
なんにせよ、ただただ粋だなぁと思いました。
空が高く青くなり空気が澄むこの頃になると、俄然楽しくなるのが香り遊び。
初めて香水を買った高校生の頃から十年余、香水とは離れたりはまったりを繰り返す日々でしたが、去年くらいからまた私の中で香水熱が再燃しています。
金回りの良い時期にはまったものだから、「最高の一本」を探究するだけでは飽き足らず今では「季節にふさわしい香水」まで探している始末。
なんでしょうね。四季のある国に生まれたことが敗因なのでしょうか、「四季の折々に合わせて楽しむ」ことに美学を感じざるを得ない最近です。
季節のうつろいによって装いや住まいの姿が変わる、日本人の文化というものがことさら美しく思える年ごろになってきました。おしゃれの究極というか。(しかもその起源は平安時代にまでさかのぼる由緒正しさ)
最近買った中原淳一さんの『おしゃれの絵本』でも、おしゃれというのは季節に合わせた色や素材をふさわしく使うことと書いてありましたし。
昔から、母は私のやること成すことに全然口を挟むような人ではなかったのに服にはめちゃくちゃうるさくて「季節感の無い服を着るな」と口を酸っぱくして言われて育ったので、ことさら季節感を尊ぶ精神を持っている気がします。
そこにもって香水。はっきり言って沼。四季はおろかパーソナリティーまで表現できてしまう豊かな多様性と表現力を持つ沼でしかない深い世界、この調子でずっと楽しんでいけたらと思っております。
◎今年使った香水
■初春〜春
ペンハリガン/サボイスチーム
人生初めての高級香水ペンハリガン。今年の2月か3月くらいのまだ寒い頃に正気を失って購入。
ずっとロクシタンのローズ香水を使っており、新しい香水が欲しいけれど石鹸の香りか花の香りの香水が欲しくて迷っていたらデパートのお姉さんが「これではどうか」と出したのがサボイスチーム。
あったかい湯気の中から超いい匂いの薔薇の石鹸の香りが立つような香り。石鹸、かつ薔薇という2つの希望を融合したアイテム。デパートのお姉さんの要望キャッチ能力はすごいでぇ…!
超きれいな花の匂いなのに甘さではなく清潔さと絶妙な温かさを感じさせる香水。
発売したのは初秋だったので秋冬向けに作られた香水なのでしょうが、私はやっぱりこの香水は雪解けの春の始めから春の間にぴったりだと思っている。桜が咲いている頃のイメージ。
■梅雨〜真夏
ロクシタン/ヴァーベナ
蒸し暑くなった頃、サボイスチームが温かい薔薇の香りなので季節に合わなくなり、合わない季節に付けるにはもったいなさすぎるお値段なのでロクシタンに切り替えました。
ヴァーベナのレモンの香りは湿度が高くてじめじめして不快な梅雨〜真夏の季節につけるにあたってぴったりの爽やかさ…なのですが、なんでか知らないけどこの香水、オードトワレのくせに匂いが秒で消える。
いや秒は言いすぎだけど、もって1〜2時間。あまりにも儚いのでうそだろと思って4プッシュくらいしてもそんなもん。驚きの持続時間。汗をかくから消えるのか? 分からないけれどこの季節につける気にはなれない。
匂い自体は甘さもくどさもない爽やかで柔らかいシトラス。朝にぴったりなフレッシュさで男性にも間違いなく合う。(秒で消えるけど)
■夏〜初秋
ジェニファーロペス/スティル
ヴァーベナが秒で消えるので新しい夏香水が必要だと思い、色々探した結果ジェニロペのスティルに。
湿度の高い日本において、夏は香水が一番難しい季節だと思います。甘い香水はまず合わないけれど、マリン系と言われるメンズ香水によくある香りは私はケミカル臭を感じすぎて苦手。同じくグリーン系も苦手。(頭が痛くなる)
スティルは「紅茶の香り」と言われる香水で、紅茶だったら夏でも合うかなぁと購入しましたがその予想がぴったりはまりました。トップノートは日本酒と紅茶、ミドルノートは甘すぎないフローラルで日本の夏にも合う爽やかで華やかな香り。
ジェニファーロペスは他にも『グローバイジェイロー』という「風呂上がりのジェニロペの香り」を表現したという香水があり、ジェニロペ自身もハードなダンサー(つまり汗をかく職業)であることを考えると、湿気や汗の要素を加味した香水に強いレーベルなのかもしれない。
■晩秋〜冬
ラリック/アメジスト
すでに生産終了しているひと昔前の香水。
(♯前置きスタート)
香水に初めてはまった頃、私がとても好きだったのは高校生らしくフルーティー香水でした。
色々なフルーティー香水を試したあとに、当時異様に好きだったブルーベリーの香りはないだろうかと探したところ、もっともブルーベリーの香りに近そうだったラリックのアメジストをネットで見つけて購入。
届いてさっそく付けてみて悟りました。17歳の自分には似合わないと。
香水はその年代になって初めて似合うものがあるのだ、と母はうなだれる私に言い、瓶がとても美しいので「ちょうだい」と押収したもののフルーティー香水が嫌いなので母も付けることなく十年以上が経って、去年の冬に実家で発掘されたものです。
(♯前置きおわり)
アラサーからようやく似合う大人ベリーの香りで、圧倒的秋香水。涼しさも越え風がひんやりとして木々が茜に色づき始める頃に付けたい香水です。
ブラックベリー、ラズベリー、カシスの香りが少しのスパイシーさで甘くなり過ぎず引き締められ、フローラルなミドルからバニラとムスクが優しく香るラストへ変化する。
大人っぽいんだけれど無邪気な感じ。30代〜40代まで使えそう。
十数年も前の香水なのに全然香りが飛んでいないのがすごい。
ということで今年使った香水4本でした。順番的には冬:アメジスト⇒春:サボイスチーム⇒夏:ヴァーベナ⇒秋:スティルで使用。
なのでこれからはまたスティルかアメジストを使いつつ次なる秋冬香水をまったり探していく方針。