冬ももう終わりですね。
ところで冬って季節は嫌いですが字面と音はとても好きです。良くないですか。「冬(ふゆ)」。
春夏秋冬の中で、もっとも厳しくて弱いものは死んでいくような季節なのに、どうして冬は「ふゆ」なんて柔らかい音で呼ぶのでしょうね。
調べてみると、どうも『(寒さに)震える』から『ふゆ』に転じたようです。へーほー。
今年の冬は29年の人生の中でも一段と気を付けてとても元気に過ごしていたのですが、それでも先々週は油断して上咽頭炎になり一日臥せっていました。
あれだけ気をつけていても風邪を引くのなら、私のしてきたことは無意味なのかとへこたれてしまいそうになりますが、けれど今年は冬季うつにならずに済んだことを思うとそれだけでも良しとすべきかもしれません。
ということで平成最後の冬に勝利宣言をしたところで、今月の読んだもの、観た映画のまとめです。
◎漫画
年収250万円の独身女性の住宅漫画、ひっそりと完結。
「プリンセスが白馬の王子様と結婚する物語」が従来の王道ハッピーエンド少女漫画なら、プリンセスメゾンは「プリンセスが自分で自分のお城を買う物語」という話を聞いて、めちゃくちゃ興味が湧いて読み始めたのですが、本当にその通りの素晴らしい物語でした。
3巻でも泣きましたが最終巻6巻はやっぱり大号泣。
池辺葵さんの漫画はいいよね…。静かに胸を刺してくる。
『ある日突然オタクの夫が亡くなったら?』/こさささこ
ある日突然オタクの夫が亡くなったら? 身近な人が亡くなった時にやるべきこと、起こること
- 作者: こさささこ
- 出版社/メーカー: KADOKAWA
- 発売日: 2018/12/20
- メディア: 単行本
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ツイッターで流れてきたので勉強になるかなと思って購入。突然家族が死んだらこういう流れになってこういう手続き・処理が必要になりますよという知識が得られます。
私は母一人・兄二人の母子家庭で育ったのですが、兄二人がぜんぜん頼りにならないため「ある日母が死んだら私はどう動けばよいのだろう」と調べていた時期があったので、割と知っていることばかりでしたが、そんなことを考えたこともない人には良い知見になると思います。一冊家に置いておくといいかもしれません。
『夫のちんぽが入らない 2巻』/ゴトウユキコ,こだま
2017年に出版されたベストセラー私小説のコミカライズの2巻。私は小説から読んだ作品はコミカライズ版が読めない人間なのですが、ゴトウユキコさんの絵柄がとってもこだまさんの作風に合っているのでこれはいけるかもと思ったのですが、やっぱり若干違うというか、う〜〜〜〜〜〜ん…。(※私が原作を好きすぎるだけ)
そういった解釈の違いや漫画家さんの作家性が映し出されることを楽しむものだとは分かっているので、3巻が出ればそれも読むつもりなんですけれど。
林真理子さんの『最高のオバハン 中島ハルコの恋愛相談室』を東村アキコさんが大胆に漫画化。
めっちゃ面白い。
はちゃめちゃな人を描かせたら天下一品の東村アキコさんが戦闘力つよめのババアなんて描いたらそりゃ面白いに決まってますよね??っていう。林真理子はよく分かってるなー!
続きがめちゃくちゃ読みたいので原案の『中島ハルコの恋愛相談室』をついつい買いそうになりますが、がまんして東村さんが描く2巻を心待ちにしています。
◎本
『ガセネッタ&シモネッタ』/米原万里
ロシア語同時通訳者で作家の米原万里さんのエッセイ。米原万里さんほど日本語の感性が鋭い人は滅多にいないということがよく分かる、もの凄く面白いエッセイ。
米原万里さんはとにかく知見が広く、世界を股にかけてロシア語と日本語の海の中を深くもぐって得たものを、きらめくような感性と知性でもって文章にしてくれている。とてもすごい。(語彙力の死)
個人的には「日本語は習得に恐ろしく時間がかかるが、日本語で書かれた文章は英語やロシア語(習得にかかる時間が短い)よりもずっと早く読める。言語は帳尻が合うように出来ている」という部分と、「作家の作品の長さはその作家が想い人を口説く長さに匹敵している。イケメンの作家ほど短編が多い。不細工で非モテをこじらせていたドストエフスキーは推して知るべし」というのがハイライト。面白すぎ。
乙一こと本名安達寛高さんの別名義すべて込み込みの寄せ集め短編集の文庫版。なので再収録も多いのですが、この短編集は名作揃いよねってことで手元に置きたく購入。
表題作の『メアリー・スーを殺して』がすっごく良かった。乙一はやっぱりこの手の十代の少年少女の成長を描かせると最高に光る。
『ある印刷物の行方』も良かったし、『エヴァ・マリー・クロス』を読んでやっぱりこの人は幻想小説の才能があるよなぁと思わされる。どういうインプットをしていたらあんなビジュアルを思いつくようになるんだろう。
ぜんぜん別の話だけど、また日記書いてくれないかな。(ちょう読みたい)
『パブリックスクール 1巻〜3巻』/樋口美紗緒
名作と名高いBL小説。イギリスの名門パブリックスクールを舞台に、貴族の青年エドワードとその義弟(本当は叔父)の礼の切なくて苦しい恋愛を描いた物語。
とてもよく出来たBL。
イギリスって実はいまだにものすごい階級社会だし、同性愛に至っては1970年まで犯罪だったんですよね。そんな国で貴族の妾腹である礼がどんな差別を受けるかということや、ゲイとして貴族の長男に生まれることがどんなにしんどいことかということがきちんと描かれていて良かった。
その上で悶えるような「好きでいることがつらいような好き」をじっくり丁寧に描くものだから、読んでいる間は礼に同調するあまり始終泣いていました。エドにバスタブを蹴られるシーンですら怖くて泣くレベル。(泣き過ぎ)
あともう礼がオーランドとの交流によって成長するところが最高で。学園ものって最高だなって改めて「学園もの」の良さに気づくっていう。
劇場のバルコニーからリーストンの風景を見下ろしながら、
「この世界は広い。だけどきみの心は、この世界よりももっとずっと広い。広くなれるんだ」
「きみの想像力は、一生涯、きみの杖になってくれる」
のシーンが最高に青春でグッと来ました。こういうのもっとくれ!!!! 世の中に必要!!!!
本作の1〜2巻は礼とエドのパブリックスクールで過ごす最後の一年を描いたもので、2巻途中からパブリックスクールを出た八年後のお話になるのですが、パブリックスクール内での話が最高過ぎたので八年後の話は蛇足だったなと思いました。八年後の話よりも、最後の一年間をもっとじっくり2巻まるまる使って書いてほしかった…。本当に惜しい…。でもそのパブリックスクール内での話は唯一無比の素晴らしさだった。
おまけ
1巻ラストから濡れ場が始まるのですが、エドがとっても変態で(最高すぎるやんけ)と思っていたのに八年後に恋人関係になったにも関わらずぜんぜん変態なセックスをしなくなったので、どういうことかと! おい!!! もっと礼と変態なセックスをしろよ!! お前の欲望はそんなものじゃないはずだろう!!!
作者さまへ⇒エドはぜったい変態だと思うのでもっと彼の変態を爆発させてあげて下さい。きっと彼は本当はもっと変態なプレイをしたがっているとおもうのです。(謎から目線)
HONZに掲載されていたヤマザキマリさんの書評が面白すぎて購入。めっっちゃ面白かった。
原節子の前に原節子なし、原節子の後の原節子なし。日本映画界においてたった一人で「女優」というものを形作った人。今よりもさらにひどい女性差別が蔓延する社会の中で、常に理不尽と苦悩にまみれながらも自制心と理性を手放さずに己の美学を貫いた、あまりにも強い人。本当に存在自体が奇跡だったと思う。
原節子は1930年代から大人に交じって働き始めたわけですが、この時代に女性が並外れた知性を持っていることは、それ自体がとてつもない苦痛だったのですね。目を閉じ、耳を塞ぎ、自分で考えることを放棄する方がずっと楽に生きられた。けれど原節子は何もかもから目を逸らさなかった。一切妥協しなかった。彼女の美しさはその強さから生まれたものだった。
女が弱い話が嫌いなので邦画はあまり観ないし小津映画も観たことがなかったのですが、そんな途方もないほど強い女性が演じていたというのなら『東京物語』はぜひ観なくっちゃ。
大正〜高度経済成長期までの激動の日本の歴史もすごく頭に入りやすくて良かったです。
◎映画
4回目最終回のボ・ラプ。4回観ても「QUEENバンド解散」「ジム・ハットンに「君には本当の友達が必要だよ」と言われるシーン」「マイアミに電話してみんなと仲直りするまでのシーン」「お父さんとハグをするところ」「ライブ・エイドでボ・ラプを歌ってからラストシーンまで」はすべて泣きました。(泣き過ぎ)
『クリード2』
隣の席の男が過去経験したことないまでに息が臭くてぜんぜん集中できない・ロッキーシリーズを観るのが初めてのせいで、あんまり感動できなかった。(´・ω・`)
『天才作家の妻』
ノーベル文学賞を受賞した小説家の作品は、実はその妻がすべて書いていたという物語。
御年70歳の主演女優のグレン・クローズがものすごくきれい。神々しいような美しさ。あんな風に年を取りたいものだわ…!
物語として本当に良く出来ていて、人間の複雑さや業といったものがうまく描かれていましたよね。
1960年代当時、女性は「妻」以外の仕事は認められていなかったけれど、ジョーンはどうしても小説が書きたかった。ジョセフ自身も作家だったが故に、彼女の才能が稀有なものであることは分かっていた。だから自分の名前で作品を発表し続けた。嘘をつき続けることは彼にとっても大いなる負担だった。それでもそれを続けたのは、生活やましてや自分の虚栄心のためだけではないことを、ジョーンもまた知っていた。だから二人は夫婦でいられた。良い夫婦とは持ちつ持たれつな関係である、ということが本当にビシバシ伝わってくる夫婦の物語。破れ鍋に綴蓋ァッ!
以上、2月のエンタメ事情でした。
今月はあと映画は『アクアマン』を観て、漫画は『凪のお暇』の5巻を読む予定だけどそれについてはまた今度。