ごんブロ

だいたい月に一度、本や映画の感想を書きます

『窮鼠はチーズの夢を見る・俎上の鯉は二度跳ねる』はBLどうこうじゃなく恋愛とは何かを突き詰めた名作

 

窮鼠はチーズの夢を見る (フラワーコミックスα)

窮鼠はチーズの夢を見る (フラワーコミックスα)

 

 

俎上の鯉は二度跳ねる (フラワーコミックスα)

俎上の鯉は二度跳ねる (フラワーコミックスα)

 

  

 

これが恋愛か? 本当に?

こんな体の芯から押し潰されそうな痛みを抱えることが?

足元から根こそぎ全部もってかれるような

ほかの荷物は何も持てなくなるような苦しさが?

 

冗談じゃない

 

こんなものが恋愛なら

もう二度としたくない

 

 『俎上の鯉は二度跳ねる』/水城せとな

 

 

わかる。

 

 

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昔から名作であることは知っていたのですが、なんとなーーく読んでいなかった本作。(強いエネルギーを持つ作品ってそういうのあるヨネー)

 

恋愛している時にこんなものを読んでいたらうっかり被弾して当たり所が悪くて死んでいたかもしれません。よかった、恋愛一切していない時に読んで…。

 

まだ2回しか読めておらずぜんぜん咀嚼出来ていないので感想を書くのもなぁと思ったのですが、それでも何か書かずにはいられない物語ではあります。

なのでダラダラと書いていく。

 

今ヶ瀬について

 

 ・【恋する人選手権】優勝。ああ〜…恋をしていたらこういう反応をするよね…というようなリアルなリアクション。新しいジャケットを褒められた時の顔とか可愛すぎか。

 

・一緒に風呂に入ってて恭一に「あなたって本当に御しやすい男…」って余裕ぶったこと言ってるのに恭一に素で見返されて顔真っ赤にするシーンは惚れたものヒエラルキーがあまりにも鮮やかに描かれていてめまいがしそうなほどすごい。なんでこんな表現できるの…。

 

・「こんなに他人を好きになったら壊れる」というせりふは今ヶ瀬が言うとすごい説得力。

 

・ストーリーの合間にサラッと差し込まれる「学生時代、俺はあなたの煙草になりたかった」や、(恭一が元カノにもらった)ライターなんか欲しいわけがなかった、ライターをもらう口実にあなたの指に触れたかっただけだ、みたいなエピソードが珠玉のエモさ。



恭一について

 

・こんな男に惚れてもうたらそらあか〜〜〜〜〜〜〜〜〜ん

 

Amazonレビューをじっとり読んでいると今ヶ瀬のようないい男がなぜ恭一のような駄目男に心底惚れたか分からないって人をちょこちょこ見かけたのですが、ばか!!!!!

 

大学時代テニサーに所属しているコミュ力の高さ・地味なようで実は端正に整った涼しげな顔立ち・清潔感にあふれている(お洗濯の良い匂いがしそう)・細やかな気遣いに長けている(きっとあらゆる万事にそつが無い)・意外に情に冷たいって、バチクソモテますから。

 

あと流されやすい=ノリがいいってことですからね。恋愛における流されやすさは魅力ですから。流されやすい人は本当にモテる。逆に言うとモテない人って本当に流されない。かたくな。

 

・ラストの今ヶ瀬に積もった雪を恭一が払うシーンが本当にすき。愛しているって本当こういうことだよな…。愛とは生命の心配…!(『愛するということ』/エーリッヒ・フロム)



ほかに言いたいこと

 

・『窮鼠』のタクシーのシーン最オブ高。エロさがすごい。エロいってああいうことですよね。欲情しながら電話で別れ話をする姿に欲情して手が絡み合ってってすごい。こんなシチュエーション経験したことない人生だけど、そりゃこんなんめちゃめちゃ興奮するわ。バックバージン捧げてしまうのもうなずける。

 

・『俎上』の復縁セックス事後。ていうか、復縁セックス事後というシチュエーションがめちゃくちゃツボだということをこれを読んで再確認した。え、最高過ぎません?? 復縁セックス事後。もうあらゆる復縁セックス事後だけが描かれたアンソロジーが読みたいくらいだわ。(そんなものはない)

 

・「…ほとんど外食だったよ?」ってへらっと笑う恭一に今ヶ瀬が「黙れよもうあんたなんか好きじゃない」って冷めた返しをするシーンむっちゃすっこ。

 

・BL漫画に出てくる女性キャラって基本無能かハリボテばかりだけど夏生やたまきやたまきの友達とかが頭の良い女性として描かれているのが良い。

 

・別れ話をされたたまきちゃんがめっちゃ冷静な顔で「そういう話を立ち話で済ませるつもりですか」って詰めるところ、女の怖さがよく描かれていてめっちゃすき。

 

・作者のあとがきの読者から色んな共感のお手紙をもらったことに対しての「恋愛というのはごく個人的な事象であると同時に普遍的な事柄であることを実感した」という言葉は金言。

 

Amazonレビューで書かれていた「男女でも成り立つようなBLは多いけれど、この物語は同性じゃなきゃ決して成り立たない」という鋭い書評に胸を打たれた。

 

・私の中のベストAmazonレビュータイトルは『世界で一番愛してくれたのは男でした』。このキャッチコピー映画でも使ってくれ〜〜〜!!! ほんまこれ本質を捉えてる〜〜〜!!!!

 

・とにかく良く出来た物語。