ごんブロ

だいたい月に一度、本や映画の感想を書きます

ごんぶと日誌(2020.4.10~4.12)

四月十日 金曜日

三島由紀夫レター教室』を読み終える。とっても面白かった。そもそも私は書簡体小説が大好きなのである。それに加えて三島由紀夫の書く日本語がどれもセンスがあって言葉の端々が美しくてたまらない。声に出して読みたくなる。

『それにしても、炎タケルってかわいいわね、すぐ怒って。あなた、そう思わない?』/P36

『自分のことをちっとも書かず、あなたの魅力だけをサラリと書き並べた大川点助の恋文には、私たちは大いに学ばねばなりません。そして片ときも忘れぬようにしましょう。あらゆる男は己惚れ屋である、ということをね』/P55

『便せんをすかしてみて、そこに少しでも人間の血がすいて見えるようでは、脅迫状は落第なのです』/P60

『あなたのくやしさはよくわかりますし、それを率直に打ち明けて、たよってくださったお気持ちもうれしく存じます。だいたい、あなたはわりにお人よしだと思いますが、偽悪者ぶるところがお若いのね。だいたいあなたぐらいのお年から、人間は偽善者になることを学ぶものなのですが。』/P86

『それは、それこそ静かな冬の日光のような、だんだん心と体をあたためてゆく愛情で、幼いころの日向ぼっこの思い出につながってゆくような、深い懐かしさにみちた愛情なのだ』/P151

などなど。句読点の打ち方がリズミカルでいいな。だいたい氷ママ子さんのお手紙は品がよくて好き。『裏切られた女の激怒の手紙』なんて全文好き。

それにしても七十年代の筆まめな大人たちは、こうまで美しい文章とまではいかなくとも、こんな風に気軽に手紙のやりとりをし合っていたのだろうか。手紙ももちろん大好きな私、そんな時代に羨ましさを覚える。

 

四月十一日 土曜日

お昼に食堂に行くと子持ちの既婚女性先輩二人がいたので、同席させてもらいすでに盛り上がっているお話を聞く。最近の『桃太郎』のストーリーの細かなところが我々が子供の頃のそれと違っていて、具体的には鬼退治がぬるい(一本背負いで倒す)という話だった。

そんなぬるい方法で金品を取り返したら鬼達から報復されるじゃないか、首を落とすべきだという意見や、そもそも鬼が村人から金品を強奪したのは彼らが貧困にあるからに他ならず、真の平和のためには鬼に仕事を与えて彼らが経済的に自立する道を作らねばならないという意見が出て、鬼ヶ島で鬼が出来る仕事について皆で考えたお昼だった。

鬼ヶ島の海底油田採掘については無知な鬼達がやっても結局大国に搾取されるだけなので、鬼ヶ島ブランドの真鯛養殖事業で落ち着きました。

仕事が終わると土曜日ということもあり、電車がめちゃくちゃに空いていて、ようやく緊急事態宣言下らしさを覚える。ネットでは安倍首相が「企業の出勤者最低七割を減らして」と指示を出したようなので、来週以降はもっと減るのかもしれない。

私が勤める企業はインフラの一つなので今もずっと止まることなく働き続けていて、実のところ在宅勤務になったら私は一日中暗い考えにとり憑かれて一気に気が滅入りそうなので、こんな時勢でも働きに出ることに抵抗感は全然無い。けれどさすがにそろそろテレワークになるのかも。

夜、観るものが何もないと母が言うのでNETFLIXアニメ『ドロヘドロ』を共に観る。大好きなブログ『マンガ食堂』さんで知っていた作品だけれど、作中で餃子が出てくること以外何も知らず、Twitterの広告で流れてきたあらすじがめちゃくちゃ好みだったので今さら鑑賞する。オリジナリティにあふれた世界観と魅力的なキャラクター達とバイオレンスとシュールなギャグが交錯する物語で、とっても面白い。シン役の声優さんが「エンさん、」って呼びかける声がめっちゃ好き。あとで調べてみると進撃のライナーの声をあてていた人だと知って驚く。

 

四月十一日 日曜日

一日雨でそのうえ寒い。久しぶりに作業部屋の灯油ストーブをつける。一ヶ月ほど触っていなかった。今ストーブに入っている分の灯油は使い切らないと駄目なので、もっとこまめに使わないとならない。

図書館が一ヶ月間の休館に入ったので、本格的に読みたい本が手元に何もなくさびしい。まだぎりぎり本屋さんは開いているので紙の本は買えるけれど、わざわざ出かけるくらいなら電子書籍で買えばよくない?とも思う。ちなみに今いちばん読みたいのは村井理子さんの新作エッセイ『兄の終い』。

夕方から『ドロヘドロ』を九話まで視聴する。主人公の相棒女性の腕っぷしが超強かったり、両者の関係性が「友情」であったりと、固定観念と違ったジェンダー観が流れている作品かと思えば、やたらと女性のバストを性的魅力として打ち出すシーンがあって、そこがちぐはぐに感じる。あんな弱肉強食の世界において、女性が自分の胸の小ささに劣等感を抱くだろうか。男性製作者はそれについて不自然に思わないのだろうか。

晩御飯はサバの水煮缶を使ったアラビアータパスタだった。昼はパンでおやつはガトーショコラの乗ったプリンだったので、今日はよく小麦粉を食べた。来週は控えようと思う。