ごんブロ

だいたい月に一度、本や映画の感想を書きます

寸借詐欺(?)を目の当たりにした話

だいぶ前の話をします。(メモ帳に書きっぱなしでブログに投稿し忘れていた)

 

少し前に、「寸借詐欺では?」と思うめずらしい現場に出くわしたので、備忘録として残します。

 

その日私は夜10時過ぎ、京都と大阪の境目にある街の駅から、大阪の中心部へ向かう電車に乗りました。

電車が出発してしばらくした頃、座席に座っていた大学生くらいの青年が突然「すみません」と大きな声を出しました。

 

「あの、すみません。こちらのおじいさんが、財布を落として家に帰られないみたいなんです」

 

私はその時色々あってひどい乗り物酔いをしており、ドア付近に立っていました。目を向けると青年の隣に、青いスーツケースを抱えた小柄なおじいさんがうつむいて座っています。

その顔や半袖から見える腕はよく日焼けしており、手には鬼ころしのパックが握られていました。

 

 

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鬼ころし

 

 

周囲の注目を浴びながら、大学生風の青年が続けます。

 

 

 

「このお爺さんがお家のある長浜まで帰られるように、皆さんで3,000円を出し合いませんか。ぼくは今お金が無くて1,000円しかないんですが、よろしくお願いします」

 

 

 

 

 

 

ぜってえ嘘だろ。

 

 

 

 

 

今にも決壊しそうな吐き気を噛みころしながら、私は心中でツッコみました。

 

 

いやもう絶対嘘。100うそ。何言うてんのこいつ。騙されてるて。おかしいて。警察行けば電車賃貸してくれるって。どっちみち財布落としたんやったら警察やって。

 

ていうかどう見てもそのじじいアル中やって。そいつにお金渡してもぜんぶ鬼ころしになるだけやって。そもそも、夜の10時にここから長浜行かれへんやろが。

 

 

と私がぐるぐる考えている間にも、青年は緊張と羞恥と誰も反応してくれない焦りで、可哀そうなほどおろおろとしており、「やめなさい。警察行きなさい」と声をかけた方がいいだろうかと迷っていたら、私の隣の座席に座っていた40代ほどの女性がすっくと立ちあがりました。

財布から1,000円札を取り出しながら、

 

 

 

「これ、少ないですけど」

 

 

 

 

 

あか〜〜〜〜〜〜〜〜〜ん!!!!!

 

 

 

 

その女性が駆け寄ったのを潮に、別のサラリーマン風男性も立ち上がります。

 

 

 

 

 

「僕はちょっと小銭しかないんですけど…」

 

 

 

 

 

 

 

お前もか〜〜〜〜〜〜い

 

 

 

 

 

 

その男性でどうにか3,000円が集まったらしく、青年は「ありがとうございました!!」と周囲に礼を言い、人情の温もりに触れた老人はあふれる感涙を腕でぬぐい、私は愕然としながら次の駅で降りました。

 

人ってあんなにも簡単に騙されるのかと。

 

確かにあの老人が嘘をついていた証拠はありません。けれど、どう考えてもおかしなことだらけです。

夜の10時に大阪行きの電車に長浜(滋賀県)に帰りたい人間が何故いる? 財布を落としたのなら何故警察に行かない? そしてなにより、何故子ども(青年)に頼る???

全部嘘だからとしか思えません。そんな明らかな嘘に騙され、いともたやすくお金を差し出す複数の人間を目の当たりにし、かなりの衝撃を受けました。

嘘をついて人からお金を騙し取ることを詐欺と言います。れっきとした犯罪行為が目の前で展開されていたのに、しかも子どもが被害に遭っていたのに、何も出来なかったことを大人として情けなく思います。

確かにその時私は今にも吐きそうでめちゃくちゃしんどかったのですが、とはいえ体調万全だったら「ちょっとちょっと!」と割りこんだかどうかと言うと、あんまり自信がありません。

あのジジイ絶対同じこと何回かやってるんだろうな、これからもするんだろうなという気はしたので、鉄道会社のHPの意見要望フォーラムから「こういうことがありましたので一応」という報告はしましたが、意味があるのかどうか。

 

ともあれ、また似たような現場に出くわした時は、ちゃんと動ける大人でありたいなと反省する次第です。