2020年はかつてなく本を読んだ一年となりました。昔から本はよく読んでいましたが、一年間で一般文芸をこれだけ読んだのは、31年の人生で初めてだと思います。
そんな2020年に読んだ本の中から、特に良かった10冊を選んでみたので、よろしければご笑覧下さい。
- 流浪の月/凪良ゆう
- 小児性愛という病/斉藤章佳
- 掃除婦のための手引書/ルシア・ベルリン
- 対岸の彼女/角田光代
- 孤独な夜のココア/田辺聖子
- ザリガニの鳴くところ/ディーリア・オーエンズ
- 沼の王の娘/カレン・ディオンヌ
- アレックスと私/アイリーン・M・ペパーバーグ
- ババヤガの夜/王谷晶
流浪の月/凪良ゆう
凪良ゆうさんは三年前にBL小説『愛しのニコール』を読んで以来好きで、BL小説はあんまり読まないんだけれど凪良ゆうさんの小説だから読む、ということをしており、今回の『流浪の月』はすんごくいいなぁと思って周囲にも薦めていたら本屋大賞を受賞して、「ほら、な???」ってものすごいドヤ顔をすることが出来たので、良い印象しか無い。本というよりも自分のエピソードやんけ。いや、凪良ゆうファンとしては本当に感無量でした。
小児性愛という病/斉藤章佳
読んでいていちばんゾッとしたで賞2020。
依存症治療を行う精神科医である著者が性犯罪加害者と向き合うことで見えてきた加害者の認知の歪み、社会構造の歪みを分かりやすく説明した上で、何が問題なのかをはっきりと提示してくれている名著。
ツイッターではよく児童ポルノの表現規制問題について紛糾しますが、児童性加害を行う男性の実に100%が、実際に子どもに加害する前に児童ポルノを(すりきれるほど)消費しており、明らかにそれがトリガーとなっているという事実を本書で知ったことで、私も表現規制はやむなし派になりました。
実際の小児性愛者から得た視点やインタビューなども多く、彼らがどういった子どもを狙うかなどについても分かりやすく書かれているので、子ども(女児には限らない。むしろ男児の方が獲物としては加害しやすい)がいる親御さんは一読する価値があると思います。小児性害者が自分の欲望にかける熱意(そのために教員免許を取ることも辞さないなど)、認知の歪みの深さといった、絶対に自分のいる世界では知りえないことをたくさん知れる一冊。
掃除婦のための手引書/ルシア・ベルリン
本書収録の短編『いいと悪い』が2020年読んだ中のベスト短編です。
岸本佐知子さんの訳が良するというのもあるんでしょうね。どれも素晴らしい作品でしたが、『いいと悪い』は一生読み返すと思います。
本当に独特な、乾いていて引き締まった、透明な温度感のある文章で、ここぞというところで眩しいほどにスパークする。「ルシア・ベルリンの文章は帯電している」という言葉に深く納得します。
対岸の彼女/角田光代
今年二番目に泣いた本。2005年直木賞受賞作。
ああ、もう、こういう小説が読みたくて小説を読んでいるよなぁと思うような、大人の女の友だちの話。
コンビニ人間/村田紗耶香
2020年は私にとって、村田紗耶香さんに出会った年!
シニカルで冷徹な洞察力とすっとぼけたユーモアが融合したあまりの面白さと才能に驚愕して、このあとも次々と村田作品を読んでいきましたが、どれもこれも最高で、どっぷり村田沼に浸かっています。
『生命式』も『ミラクリーナ』もほんとに最高…
孤独な夜のココア/田辺聖子
9月に読んで以来、繰り返し読み返している短編集。何度読んでも最高。何度でも読み返したくなる。12編収録で、すべて15分程度で読めるので電車のおともに最適。というか人生のあらゆる場面のおともに最適。
ザリガニの鳴くところ/ディーリア・オーエンズ
2020年私的エンタメ大賞。ぶっちぎりに面白く、ページをめくる手が止まらなかった。
1970年代のアメリカ・ノースカロライナ州のど田舎の湿地帯で、たった一人で暮らす少女カイアの目を通して語られる美しい自然描写、生き生きとした動物たちの描写だけでもすごいのに、後半からは息をのむような緊張感あふれる法廷サスペンス劇が展開され、512ページという長編にも関わらず、飽きさせることなく一気にラストまで連れていってくれます。
沼の王の娘/カレン・ディオンヌ
私の2020年のエンタメ大賞2位。この本の面白さについては、すでにあらすじがすべてを表していると思います。
【拉致監禁犯の男とその被害者のあいだにできた娘──それがわたしだ。
原野の沼地で生き抜く術を熟知した父を太陽のように崇めながら、
12歳まで電気も水道もない小屋で育った。そう、あの日までは。
そして今日、終身刑の父が看守を殺して逃走した。
父を捕まえられる人間がいるとしたら、父から手ほどきを受けたわたし以外にいない。】
でも犬が死ぬ本でもあるので、犬の死がNGの方は避けた方がいいでしょう。犬が死んだところは本当に胸糞。
アレックスと私/アイリーン・M・ペパーバーグ
2020年いちばん泣いた本。世界でいちばん著名なヨウム、アレックスとその研究者ペパーバーグ博士の30年間の軌跡。思い出しただけでも泣ける。
今では当然のように知られている『動物は思考できる』という事実も、1970年代には異説だったのだと思うと、ペパーバーグ博士を始めとした研究者達は獣道を進んできたのだなぁ。
改めて、鳥と暮らしてみたいと思いました。
ババヤガの夜/王谷晶
バイオレンス・シスターフッド小説という新たなジャンルの代表になりそうな、とにかく面白い小説。あまりの読みやすさにあっという間に読んでギエーッてなって最後は呆然。主人公の新道依子が一から十まで爽快で推せる。
以上、2020年に読んだ本の中から特に良かった10冊でした。2021年は順位付けが出来るように、点数化でもしてみようかな。