ごんブロ

だいたい月に一度、本や映画の感想を書きます

2022年11月の振り返りと読書記録

さいきんよく読んでいるブログの人たちが、よく「前月の振り返り」を記事にしているのがイイナーと思ったので、安直に影響されて私も11月を振り返ってみます。

振り返りとしては11月は、関西の色んな博物館や展示を観に行った夏や、京都にひとり小旅行をした9月、ことしでいちばん本を読んだ10月に比べると、自分の中では各段に見劣りするのですが、かといって今さら夏のことを思い出して書くのは面倒くさいということで、とにかく11月を振り返ります。

 

 

 

第1週

・一年ぶりに会う小説の友だちとなんばでランチしてカフェでおしゃべりする。もっとこまめに連絡をとり合おうという話をした。

 

なんばフルバリのすごいナン

 

第2週

・腰が限界で鍼に行く。座りすぎによる腸腰筋の硬化が原因というので、指導してもらったとおり、階段を登る時は一段飛ばしで登るようにしたり、上半身を後ろに反らせたり、ストレッチをしていたらかなり改善した。

腰についてはもうすこし上記のことを続けて、完全に腰痛に勝利したと感じたら記事にしてみます。

 

・『すずめの戸締まり』を観に行く。

 

すずめの戸締まり の映画情報 - Yahoo!映画

 

面白かったし『天気の子』よりも好きだけれど、猫好きには耐えられない結末だったと思う。あれが犬なら私も正気ではいられなかったかも。

 

第3週

・先月末から肌荒れがひどかったけれど、朝起きたら顔がまるで殴られたかのようにパンパンに腫れて(乾燥由来の痒みがひどくて指の背で擦りまくったこと、うっかり長時間半身浴したことが原因っぽい)、朝から皮膚科に駆け込む。処方のステロイドを塗ったら48時間くらいで治まる。

肌のことをもっと勉強しなくちゃ駄目だと痛感し、SNSの美肌系インフルエンサーかずのすけ氏をフォローして学ぶ。

おすすめされていたセラミド配合クリームを使うようにしたら、過去一肌が整った。このクリームは本当にすごい。もう私はセラミド無しでは生きていけない。

 

 

 

・友人と京橋で焼肉ランチ後、旧藤田邸公園に行く。すごくいい公園だった。

 

 

公園で落ち葉を集めたり(小学生か)、写真を撮りながら大川沿いを散歩して遊ぶ。むちゃくちゃ楽しかった。

公園の外れのひょうたん池にはヌートリアもいた。そばにいたおじいさんいわく、けっこう前から棲んでおり、大阪城公園のお堀からやって来たのではないかとのこと。

 

 

・会員登録したタイムズカーシェアのカードキーが届いたので、仕事帰りにおっかなびっくり車の運転の練習を始める。

 

 

第4週

・ひたすら車の運転の練習をする。

日もとっぷり暮れてから、タイムズの駐車場内でただ駐車の練習をしていてもまったく実にならなかったけれど、そうやって運転の練習で苦労していることを会社の人たちに公言して色々質問していると、おじさんたちがこぞって手を貸してくれるように。

特に熱心なおじさんの一人が社用車を借りてくれたので、その人を教官役にして、まずは会社の入っている広大なビルの駐車場~ビルの敷地を運転したのを皮切りに、その後も2回社用車を借りて公道デビュー、隣の区まで行って帰るまで成長。

家ではひたすらYoutubeのペーパードライバー教習系の動画を見て学ぶ。これもかなり参考になった。

 

車の運転技能については、数年前にも3万円以上を払ってペーパードライバー講習を受けたのに、結局その後車に乗ることなく無駄にしたという苦い経緯があったけれど、今回『自己開示』『相談』『頼る』を使い倒すことで、今までになく前に進んだ手応えがあった。

これとは別で、ここ最近は「人に親切にしよう」という心がけをしてきたおかげで、おじさんに親切にされることに抵抗がなかったことも大きな気づきの一つだった。

私がこれまで他人の親切を受け入れるのが苦手だったのは、自分が他人に親切にしてこなかったからだと思い至る。これを心に留めて、今後も人になるべく親切にしていきたい。

 

 

読んだ本

草野來『狗の戀 無慈悲な将校に囚われて、堕とされる』

ジュエル文庫というのは女性向けDS(ドスケベ)小説のレーベルで、DS小説に文章力や物語の構成力をどこまで求めるかというのは、長い文芸の歴史の中でも未だはっきりとした答えのない難しい問いだと思います。

草野來先生はそんなジュエル文庫において、恐らく最高峰の文章力と構成力を持つ作家。

働く女性が主人公のソフトで甘々なテイストのものから、37歳ヤクザの組長が主人公というゴリゴリにハードなものまで幅広く描ける多彩さ、かつちゃんとドスケベという、今後の活躍に非常に期待している作家さんです。

私はヤクザものから入ったので、ハードボイルド系の草野來作品のファンなのですが、本作『狗の戀』はそのハードボイルド系の新ジャンル【昭和史・大日本帝国陸軍】しかも二・二六事件がテーマという、前作をしのぐゴリゴリ具合。

主人公の陸軍軍人男性と、彼に兄を殺された女性が復讐を誓うという、こういうのもケンカップルとジャンル付けていいのでしょうか。嫌い×嫌い同士の殺伐としたDS小説で、色んな角度から楽しめる大満足の一冊でした。面白かった。

 

 

本田由紀『「日本」ってどんな国?』

さいきん暗いニュースが多くて気が滅入ってしまうので、ちゃんとファクトを知って冷静になろうと思って読んだら、さらに気が滅入るようなファクトがデータを元に提示されていて半泣きになりました。

「学校」や「友だち」についての国際比較データは、ちょっと固定観念を覆されるような話が多くてとても興味深かったです。

 

 

フランシス・ハーディング『カッコーの歌』

初フランシス・ハーディング。最近ちょくちょく名前を見る、とても評判の良いイギリスのファンタジー小説作家です。

ずっと興味はあったものの、海外翻訳のファンタジー小説って、合わないととことん進まないのでなかなか手を出しにくかったのですが、ファンタジーはファンタジーでもハーディングのそれは児童文学。万人が読みやすいファンタジー、しかもミステリー仕立てなのでいっき読みでした。

1920年代のイギリスの架空の街を舞台に、自分という存在の実存を懸けて、運命と戦う11歳の少女トリスタ、彼女の力強い仲間となっていく妹のペン、バイクを乗り回す「はしたない女」ヴァイオレットたちのシスターフッドと戦いの物語。もう最高でした。ファンタジーの世界観も素晴らしくて、ぜひとも映像化されたものを見てみたい。ビサイダーのゴシックホラー的ビジュアルとか、絶対むちゃくちゃ恰好いいじゃん・・・。

アーキテクトが電話越しに言った「わたしの小さなカッコーか」のせりふ、久しぶりに痺れるほどたまらない”良さ”があった。

 

 

ジェニー・クリーマン『セックスロボットと人造肉』

イギリス人ジャーナリストによる最新科学ノンフィクション。

近い未来に必ず私たちの社会に登場するセックスロボット(人工知能搭載のうごくリアルダッチワイフ)、代理母、培養肉、人工子宮、自殺マシンのテクノロジーが紹介され、著者がそれらについての様々な問題を警鐘する内容。

とても考えさせられた。

人間がテクノロジーを生み出し、テクノロジーが人間を作り替えていく。

セックスロボットについては、これを常習することでミソジニーと認知の歪みを限界近くまで凝縮させた男が、国政や法整備に参加する危険性があるという、わりと現実的な脅威を思うと、ぜんぜん無関係ではないし、非常に空恐ろしくなるんだけれども、テクノロジーが発展することは誰にも止められない

本書で紹介されたテクノロジーはすべて、これまでの私たち人間が考える「人間性」をがらっと変えるだろう技術なんだけれど、そもそも人間は、数千年前からその当時の最先端テクノロジーを取り入れて発展させることで進化してきた生き物であることを思うと、「人間性」なんていうものはその一時代でしか通用しない、可変性豊かなものだとも言える。だから新しいテクノロジーを恐れることは無意味なのかも…とあれこれ考えたり。

セックスロボットも培養肉も代理母も自殺マシンも、ある重大な問題があって、その根本をどうにかしようとするのではなく、本質から目を逸らした解決手段であるという共通点があることも興味深かった。

読みながら色んなことを考える、とても面白い一冊でした。

 

 

平野啓一郎『ある男』

いま映画でやってるやつ。

平野啓一郎は初めて読む作家さんだったんだけれど、めちゃくちゃ文章が良くて、読んでいてずっと気持ち良かった。

ちょっとミステリー的な要素もあるけれど、べつにそれは主題ではなくて、従って特に驚くようなことも、真新しい展開も何もない、地味で静かな物語なんだけれど、さまざまな哲学的な思索を圧倒的な文章の良さが支える、非常に「ちょうど良い」小説でした。

でも最後に城戸が里枝に言った「本当に幸せだったと思いますよ」は本当に蛇足だったと思いますよ。

お前に言われんでも原と4年近く一緒に暮らしとったのは里枝本人やねんから、原が幸せやったかどうかはお前よりも里枝のほうがよく分かっとるやろっていう。無意識だとしても、こんなに嫌なマンスプレイニングはそうは無い。

 

 

オクタヴィア・E・バトラー『血を分けた子ども』

表題作が「男性妊娠小説」、しかも異星人に卵を産みつけられるらしい、ということだけをたよりに読んだら、わりと期待していた感じではないし、ちょっといまいちな短篇もあったりと、それほど新しさを感じない小説だなーと思っていたら、作者は1947年に生まれ2006年に逝去された黒人女性のSF作家だと知って驚きました。表題作は70年代に書かれたとか。時代を先取りしすぎている。

もともと伝説的な作家だったらしいのですが、日本でもようやく再評価されて今回の作品集も初邦訳されたとのこと。さいきんTwitterでたまに見る「キンドレット」もこの作家の作品らしく、そちらも気になっている。

「書くことについて」のエッセイがとても良かった。

 

11月は車の運転が脳のメモリと時間を食っていたので6冊しか読めませんでした。

 

おわり