ごんブロ

だいたい月に一度、本や映画の感想を書きます

2023年3月の振り返りと読書記録

振り返って見ると、3月はお誕生月ということもあって、とても楽しいひと月だった。

ひきつづきこの調子で春を楽しみながら、4月以降もやっていきたい。

 

 

1week

 

ひと言でまとめると怒涛の一週間だった。

 

火曜日。朝、気になっている原付バイクを販売している松原市バイクショップに電話して、15時に会社を早退して電車で河内松原へ移動、駅前のタイムズのシェアカーをレンタルしてバイクショップを訪ねて実物を確認し、11万円の中古原付を買う。

 

水曜日。クルマの運転の練習をかねて、大山崎にある山崎山荘美術館へ。写真撮影NGの美術館なので内部の写真が1枚もないんだけれど、むっちゃくちゃ素敵な雰囲気良すぎの洋館の中で、人間国宝・黒田辰秋の作品展が開催されており、すべてが物語の世界のように美しかった。クルマの運転もちょうど良い難易度で、すこし自信がつく。

 

 

木曜日。仕事終わりに大阪のティーハウスの名店・西洋茶館で会社の先輩とお茶。

 

 

何度も来ているのにいまだに名物のスコーンを食べたことがなく、この日はスコーンを食べるという目的のもと来店。ぶじに叶ったけれど、ふだん『AfternoonTea Cafe』のスコーンに慣れ親しんできた私には、もはや本格志向の英国スコーンは「おもてたんとちがう」ものであることがわかる。あれが本物のスコーンなら、私は一生日本のスコーンもどきでもいいかナ~。先輩とは下らない話をくっちゃべって楽しかった。

 

金曜日。天満のボードゲームスペース『ぶんぶく』にて友人と私の3人と店員さんの合計4人でマーダーミステリー『霧落峠』をする。これはミニ・シリーズという名前で出されているとおり、比較的軽めのマダミスで、そのせいか正直言うとあまり面白くなかった。マダミスに同行してくれた友人2人は初めてのマダミスだったんだけれど、もっと面白いものに誘ってあげたかったという悔いが残る。

 

日曜日。2月以来二度目の京橋『ナガラビットカフェ』のマーダーミステリー会に参加。『人狼村の祝祭』をやる。もうむちゃくちゃ楽しかったし面白かった。シナリオとしては前回の『九頭竜館の殺人』よりもよく出来ていて、やはり犯人は分からずバッドエンドを迎えたけれど、それも含めて最高でした。グループSNEのミニ・シリーズじゃないほうのマダミス、ぜんぶやりてえぇ~~~~!

 

 

 

2week

 

地元のフレンチ系カフェでランチを食べたあと、クルマの練習がてら大阪公立大学付属植物園に行く。

学術的価値の高い本格的な植物園と聞いていたけれど、超巨大なメタセコイアや、北米の映画そのままのセコイア並木に度肝を抜かれた。ほかにも世界各地の代表的な木々をエリアごとに植えていて、見ごたえがすごい。人もすくなく、まだ虫のいない時期だったので、とてもゆったりとした気持ちで森林浴が出来て楽しかった。

 

 

梅も見頃で、香りが素晴らしく気持ち良かった~。一年中楽しめるそうなのでまた行きたい。

 

木曜日、天満のタイ料理屋さん『旅人シェフのタイ食堂KHAO』へ行く。

 

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ものすごく美味しくて、人がひっきりなしに入って来る人気店だった。一人だったのでたまたま入れたけれど、予約がマスト。美味しかったのでまた行きたい。

その後は中崎町ボードゲームカフェ『塞翁』の木曜ゲーム会へ行く。

 

 

こういうゲーム会に行けば、マーダーミステリー仲間を見つけられるのではという狙いで参入したんだけれど、逆に人狼会から来た二人組に人狼に勧誘されてしまう。

ゲームは初心者用の簡単なボドゲを各種やり、特に「ナナ」という神経衰弱の発展版のようなゲームがとても面白かった。

ボドゲの終盤、頭を使いすぎて左側のこめかみのあたりがズキズキするくらいの片頭痛を発症するも、翌朝びっくりするくらい脳が整った状態で目覚めた感覚がちょっと忘れがたい。思考力、記憶力を伸ばすのにボードゲームはものすごく良い気がするので、マダミスだけでなくボドゲにも手を出していきたい所存。

 

週末は職場の謎メンツでごはんに行き、めっちゃ美味しいもん食べさせてもらうなど。

 



3week

 

『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』を観る。

 

 

まさかの中国系おばちゃんが主人公の多元宇宙SFカンフーアクション。すっごい滅茶苦茶だけれどすっごいカッコよくて、見たことがないような映像表現と脚本ながらも、多元宇宙ものでみんな好きな「どの次元でもあなたを愛していた」的な王道ラブストーリーも見られる。すっごい良かった。

 

金曜日と日曜日にマーダーミステリーをプレイ。

 

グループSNE『想いは満天の星に』

 

天王寺でマダミス会を主催して下さっている「あべのマダミス」さんにて参加。

スペースパニックもので、中級者レベル。むちゃくちゃ面白かった~~~。

参加されていた方々がけっこうマダミスをやりこんでおられて、土壇場でものすごいひと波乱を起こしてくれたのが、振り返ってみれば最高でした。楽しかった~~~。

「故障した宇宙船を修理する」という、私にとっては初めての「共同作業」があるゲームで、作業をするにあたり、全員が焦って一斉にワーッと話し出したところで『クール』というキャラクターネームのひとが「みんな、落ち着いて」と言った場面が最高に名が体を表していて良かった。

 

グループSNE『何度だって青い月に火を灯した』

 

京橋『ナガラビットカフェ』の場所を借りて、私の友だち、カフェの店主森永さん、そのお客さんかつマダミス仲間の大学生の6人でプレイ。

名作と名高い作品でものすごく楽しみにしていたんだけれど、当日に一人が欠席して7人→6人になったこと、作品自体が中級レベルなのに友達3人が全員初心者だったこと、自分が初めてのゲームマスターを務めたことなどから、いまいち集中しきれず。こういうこともあるのね~~~~。

とはいえ誘った友達たちはみんなけっこう楽しんでくれたみたいのでそれで良しとする。でも願わくば記憶を消してもう一回フルメンバーでやりてぇぇ~~~~! ジレンマ~~~🙃



4week

 

ドルビーシネマで『BLUE GIANT』を観る。

 

 

原作10巻分のストーリーを120分に凝縮しているので、物語は超スピーディーなんだけれど、とにかく音楽がめちゃくちゃ良かった。

でも予算不足だったのか、演奏シーンでときおり差しこまれるCG絵があまりにも安っぽく稚拙で、音楽への没入が妨げられてしまった。あんなCG絵を入れるくらいなら、その画面は黒一色でも良かったんじゃないかと思うくらい。

青春音楽ものとしてとても良かったし、凡人としての葛藤に苦しみながらも前進し続ける玉田にグッとくる映画だった。

 

土曜日、久しぶりに焼肉に行く。

 

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今里『松蘭本店』、美味しいのにお値段もお値打ちでとっても良かった!

京橋に支店があるみたいなのでまた行きたい。

 

5weekはお誕生日週間でイベントもりだくさんだったので、お誕生記事として別で書く。

 

読んだ本

 

リディア・デイヴィス『話の終わり』

翻訳者で文筆家の岸本佐知子さんが「もし自分が翻訳した作品のなかでひとつだけ、自分が書いたことにしてもいいと言われたら、迷わずこれを選ぶ」と言っていたことが印象的で手に取ったら、読んでいる途中でだいぶ後悔した一冊。

こんな本を読むのははじめて。極上の美文はいつもどおりだけれど、とにかく冗長で、こまかく、まどろっこしく、果てがない。そもそも起承転結がない。どう見ても著者であるリディア・デイヴィスとその元カレの話なんだけれど、いったい何を書きたいのか、何を読まされているのかがわからず、修行のような気持ちで読んだ。岸本佐知子さんの文章じゃなければ確実に読めなかった。

けれど半ばも過ぎてくると、ようやくわかってくる。これは「人生最大の失恋」の話だということに。

好きで好きで、絶対に別れるはずがないと思っていた恋人にフラれたとき、その人間は人生で最大に成長するのだと思う。

何にせよ、失恋が人生に与えるものは、失われるものよりもあるいは大きいのかもしれない。愛別離苦を知る者に響く物語で、本作を特別な一冊としている岸本佐知子さんの人間味により惹かれた。

ものすごく長い時間をかけて読んだので、私にとってもちょっと特別な一冊になった。いい本です。



梓崎優『叫びと祈り』

フーダニットミステリーの短編集。つまらないうえに、文章が妙に読みにくくてつらかった。出版された10年前に読めていればそうは感じなかったんだろうけれど、アマチュアとプロの境目の文章って、個人的にはいちばん癇に障って読みにくい。



井戸川射子『この世の喜びよ』

第168回芥川賞受賞作。群像に掲載されているものを読んだ。

文章はさすがにうつくしくて非常に読みやすい。人称が独特で、一人称の「わたし」と言うべき部分が「あなた」と書かれていて、ずっと呼びかけられるような心地で読まされるけれど、それがまったく変でも不快でもない。晴れた冬の昼下がりのような、ささやかな温かみを感じる物語。

5ちゃんの既婚女性板まとめを20年近く読んでいる身からすると、社会人にもなっても「おかあさんおかあさん」と求めてくる娘に対する母親のリアルな息苦しさを描いたものが読めて良かった。しかし全体的に悪くはないけれど、これが候補作の中でトップだったんなら、今回の芥川賞は受賞作無しでもよかったんじゃない? とも思う。



川内有緒『目の見えない白鳥さんとアートを見に行く』

今月のベスト本。2022年Yahoo!ノンフィクション大賞受賞作。

めちゃくちゃ面白くて深くて考えさせられる、素晴らしい作品でした。この本を読んでいて思ったことが、読んでいる途中で、思わず本から目を空中に移して考えごとをさせられる本というのが、名作の条件ではないかということ。

白鳥さんは全盲ながら美術鑑賞を趣味とする50代の男性。ある日著者は、美術館関係の仕事をしている20年来の親友マイティから「白鳥さんと美術館に行くの、めっちゃ面白いよ!」と誘われて一緒に美術館に行く。

全盲の白鳥さんはとうぜん作品が見えないので、著者とマイティは白鳥さんに作品について「どんなものか」を教えてあげなければならない。そうやって言語化することで、今まで見えていなかったことがとつぜん見えるようになることに著者は気づく。つまり白鳥さんは全盲であるがゆえに、晴眼者の目の機能を拡張させる力があった。その面白さに目覚めた著者は、白鳥さんたちとアートをめぐる冒険に出る…という話。

この本を手に取った理由は、私自身が「アートを楽しめない人間」という自覚があったからで、アートの楽しみかたの指南書になればという動機だったのですが、本書のテーマは美術に留まらず、もっと深い思索、たくらみに満ちた本で、読んでいて圧倒されながらも、非常にエキサイティングな読書となりました。

著者たちが白鳥さんと一緒にアートを見ることで、今までよりももっといろんなものが見えるようになったように、私たちは社会が「障害者」と切って区別している人たちと共生することで、もっと遠くへ行けるのではないか。そんな力強いメッセージがこめられた本でした。むちゃくちゃ良かった!

 

カトリオナ・ウォード『ニードレス通りの果ての家』

スティーブン・キングの「ゴーン・ガール以来に興奮した」という激賞文句にホイホイ惹かれて読みました。ジャンルはサイコ・スリラーもしくはサスペンス。

とにかく不穏で恐ろしげで読んでいて居心地の悪い序章、何が起きているのか絵的にぜんぜん分からない中盤を経て、まさかと思うような希望の差しこむラストに連れていかれる構成は、確かに傑作なのかも。

映画化に向けて動いているらしいけれど、映像化どうするんだ…? と非常に気になる。



熊谷はるか『JK、インドで常識ぶっ壊される』

晴れて花の女子高生になったと思ったら、親の転勤でいきなりインドの首都デリーで暮らすことになった著者が体験したインドでの2年間の日々を綴ったエッセイ。

タイトルと表紙でなんとなく想像していた「JK像」、すなわち無知で無分別なガキというイメージが、1ページ目からぶっ壊されるハイレベルな文章力にまず驚く。17歳にして本500冊は読んでそうだし、小4からSAPIXに通って都内の難関私立中高一貫校に通ってそうな、高い教養と知性、豊かな文化資本を感じさせる若者が書いたインド記として、とても興味深く読みました。

もちろんエネルギッシュでめちゃくちゃなデリーという街のすがたは面白いけれど、これはもう誰が書いても面白い、普遍的な面白さであって、この著者が書いたからこそ抱いた感想としては、ご両親の教育への熱意がすごいなということでした。おそらく1千万ちかくの教育費をかけて、難関私立学校へ通わせていた娘をデリーに2年連れていくという決意。その価値があると信じた先見性。とにかくこれがすごい。

きっとかなりの富裕層の方々だと推察されるけれど、その娘がインドで貧困と格差に問題意識を持つようになったのは、ご両親としてはどんな気持ちなんだろうとも思う。願わくば、著者が大人になってもいまの人権感覚を持ち続けて活躍されてほしい。



角田光代『愛がなんだ』

凪良ゆうさんが『汝、星のごとく』のインタビューで、『汝~』を書くきっかけとなった一冊として『愛がなんだ』を挙げていたのを読み、友達にそれを話したら、興味を持ってさっそく読んでくれて感想までくれたのに、とうの私がいまだに読んでいないので、あわててKindleで買って読んだ。

2019年の映画で有名な作品ですが、原作である本書は2003年刊行だったんですね。どうりで携帯電話を持っていないキャラクターがいたわけです。

それ以外はなんら時代に左右されない、不変の恋愛小説でした。マモちゃんはとくに覚えもないのに関わらず、こんなにも深くテルコに執着されるなんて、これは恋愛小説のガワをかぶったホラー小説でもあるのかもしれない。もしくは人を純粋に愛するなんて、狂気がなければ成し遂げられないということか。

この作品が20年前に書かれた作品であることを思うと、テルコも年をとっていれば今ごろは48歳になるわけで、48歳のテルコたちを見てみたいとも思う。



田辺聖子『苺をつぶしながら』

大好きな作家のひとり、田辺聖子さんを読むきっかけとなった「乃里子シリーズ」の最終作。思い入れもひとしおの本作、せっかくだから思い出になる読みかたをしようと思い、田辺聖子さんの生誕日である3月27日に合わせて読み始めました。

前作で33歳だった乃里子も最終作では35歳。剛との離婚から2年、おんなのひとり暮らしが楽しくて楽しくてしかたがない日々を送っている。本作は過去作とは違い、決定的なものごとが起きるということもなく、ただひたすら「人生の歓び」を謳ったものとなっていて、そこは予想していなかったのでやや残念ではあった。乃里子シリーズは実質2作で、これは外伝的な作品と言える。でも前作2作が神なのでいいや。

とはいえここまで剛というキャラクターがずっと出てくるのは私としては意外で、田辺聖子さんは乃里子というよりも剛が書きたくてこれを書いたのかと思うほど。いやわかる、ほんと、剛って良いキャラクター。前にも書いたけれど、乃里子は田辺聖子じゃなくても書けただろうけれど、剛は田辺聖子以外には書けない。

 

 

振り返って

 

・今月はマーダーミステリーに時間とエネルギーがとられて、思うように本が読めない月だった。4月はもうちょっと意識的に読書をしたい。

・睡眠はかなりちゃんと取れていて、体力気力の充実ぶりを実感した。やはり睡眠は生活のなかでいちばん大事。『一日6.5時間~7.0時間睡眠』は今後も最優先事項として取り組んでいく。

・思考力、記憶力の鍛錬になることを実感したので、来月以降ボードゲームも主体的にやっていきたい。