これでもオレは、上質な恋愛ドラマにしあげてきたつもりだぜ。
眠らない街・新宿で巻き起こる……
笑いあり、涙あり、
必然性ナシの、ラブ&コメディだよ。
kindle Unlimitedで読み放題だった「殺し屋1」がやっぱり胸にドンズバなさいこうな名作であったことをお知らせいたします。
物語としては、新宿は歌舞伎町に建つサンライズ歌舞伎町マンション・通称「ヤクザマンション」を舞台に繰り広げられる、アウトロー達のパワーゲームを描いた恐らく1ヶ月未満のお話なんだけれど、絵がめちゃくちゃ上手・キャラが立ちまくり・普遍的な面白さと、ストーリーの牽引力がすごい。全10巻なのに疲れなくスイスイ読める。
しかもエログロバイオレンスかと思いきや、その内実は「笑いあり、涙ありの上質なラブ&コメディ」。
魅力たっぷりなヒロイン・垣原マーくんと、泣き虫で暴れん坊なヒーロー・イチの一世一代のメロドラマという。
ヒロイン・マーくん(ドМ)
ヒロインを救うヒーロー・イチ(ドS)
出会うために生まれた運命のふたり
これもド名作(なぜこの名作を並べた)
ドン引きな拷問シーンが派手でとかく目に行きがちですが、この漫画、「変態とは?」というテーマについての漫画だったと思うんですよね。
変態とは何か
主人公の殺し屋のイチは、サディズムを抱えた変態。人が「痛めつけられる」ことに性的興奮を覚えるので、暴力を振るうことによって性的快感を得る。
もう一人の主人公垣原は、マゾヒズムを抱えた変態で、痛みによって性的快感を覚えるため、他者に暴力を振るってはその痛みで興奮を得るし、痛みを感じたいがゆえに自ら積極的に求めていく。
よくこの二人をして「究極のS VS 究極のM」の物語と語られますが、実際のところ、この漫画におけるSとMは、非常に似通っているんですよね。少なくとも垣原はマゾヒストでありサディストだろうと。
だから正確を期すならば、この漫画は「変態 VS 変態」であり、どちらの変態がより変態(つよい)かという勝負であったと思うのです。
そして本題である、変態とは何か? ということですが、作中によると変態とは「妄想力」だと。
妄想の力、思い込みの力の強さこそが、変態を変態たらしめる根源であり、あまりにも強いその妄想(思い込み)の力によって、変態は他者の人生を破壊し、世界をも狂わせてしまう。
暴力それ自体ではなく、その思い込みこそが恐ろしいのであり、何よりも強固であると。
新宿の裏社会を恐怖で震え上がらせるほどの強い変態・垣原の全存在をぶっ壊してしまうほどのものすごい変態・イチをも凌ぐとんでもない変態はジジイだった、という目が回るような結末と、畳みかけるような伏線回収には、全10巻のイッキ読みの疲れも飛ぶようなため息しか出ませんでした。
・個人的に推したい伏線回収
4巻にてはりつけのマー君。
カレンちゃんが縛ったの…?とやや謎だったところ、
最終巻でマー君の亀甲縛りはデイリーユーズであったことがさり気に明かされるところ。
ハラリて。
なんかちょくちょく可愛いシーンが合間に挟まれるあたり、さすがラブ&コメディを謳うだけある。
これも好き。
のぼるんと龍ちゃん可愛い。