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【今さら】アニメ・昭和元禄落語心中【ネタバレ感想&徹底考察】

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アニメ『昭和元禄落語心中』原作:雲田はるこ

 

鑑賞し始めてから15日以上が経過してまだ二期・8話というのろのろ鑑賞ペースなのですが、もう言っていいよね??

 

数年前に原作を読み終わってからこっち、ずっと言いたかったけどネタバレになるので控えてたんだけど、さすがにもういいよね??  ね???(スゥ)

 

 

信之助の父ちゃんて八雲かーーーーーーい!!!

(むしろ何故このタイミング)

 


アニメを観終わってから書こうと思っていましたが、映像をいっき見出来ない(なにそれ)という自分のあまりにものろい鑑賞ペースにしびれを切らしてしまったので、もう先に書いてしまいます。

 

 

 

本作最大の違和感・小夏について

 

 

もともと『落語心中』は漫画で読んでいて、新刊が出るのを待ち遠しく思って読んでいた好きな作品だったのですが、私は始めから小夏というキャラが嫌いだったんですよ。

 

なんでこいつは育ててもらった養父に大してこんなに尊大で偉そうな態度なんだ?

色々あったのは分かるけども、でも一滴の血の繋がりもない=育てる義務など何もない人に向島の大きなお家で衣食住に不自由なく暮させてもらって、その態度は人としてどうなんだ?

それでもなおそんなに憎んでいるなら早く自立して出て行けば??

 

という思いが先立って、見ていてイライラするキャラクターでしたがまぁ与太郎には優しいので嫌な奴というわけでもないのだろうと思って読んでいたわけです。

 

が、それを撤回したくなるほど「小夏おまえそれは無いわ」と幻滅してしまったのが、信之助の父親疑惑のヤクザの親分登場回。

 

親分を向こうに張って「あの子は俺の子だからあとから返せっつっても絶対返さねぇからな!!」と啖呵を切った与太郎に対し、事態が沈静してから「あんたなんてことしてくれたのよ!」と怒った小夏に、私はそれはもうドン引きしたわけですよ。

 

いやいや、いやいやいやいやいやいや。


いやいくらね? もともと独りで育てるつもりのシングルマザーで、結婚も与太郎に懇願されて押し切られたからと言ってもね??

ひょっとしなくても結婚するときの条件として「子どもの父親については絶対に詮索するな」とかいう言質もあったのかもしれませんよ。

いやでもね?

 

自分の子でもないのにあんなに可愛がってくれている男に対して、それは無いでしょうと。

 

そこ怒るところじゃないでしょうよと。そこで「余計なことしやがって!」と怒りの感情が芽生えるとか、お前は何様なのと。与太郎はお前の面倒も(扶養的な意味で)見てくれている男なんでしょうがと。

そのお世話になっている人に対して、その態度は人として無いでしょう。

 

と幻滅の萎え萎えで、この巻であまりに小夏が嫌いになったので思わずネットで「小夏 嫌い」とか「小夏 クソ」と検索してみたのですが、全然ヒットせず、意外なことに他の読者の方は特にこれで小夏が嫌いになったということもなく、むしろ小夏は「小夏さん好き、サバサバしていて」といった評価が一定であったのですよ。

 

だからこの件に関しては、作者の人間心理描写のしくじりかと流し、そして完結でのあのどんでん返しを受け、すべてのモヤモヤと違和感が霧が晴れるかのように解消したわけです。

 

 

小夏は八雲を男として愛していた件

 

これは作中最大のどんでん返しでした。

 

何故私を含む多くの読者がこれに気がつかなかったかと言えば、やっぱり雲田はるこが「BL作家」だったからじゃないかと思います。もう本当に盲点。ずっとBL臭のする漫画だったのに、ここでヘテロ愛が描かれるなんて盲点でした。


でも小夏が八雲を愛しており、信之助も八雲の子、という前提で見返すと、違和感があった小夏のすべての行動に納得がいくので、アニメを見ながら雲田はるこさんすげえぇぇ!とうならされました。


そりゃああんな美中年とずっと一緒に暮らしていて、自分の体もどんどん成熟した女のそれになっていくのに、これっぽっちも振り向いてもらえなかったら「殺してやるぅ!」って掴みかかりたくもなる気持ちも分かるし、だけど赤の他人だから家を出て行ってしまえば関係が終わるからなかなか出て行けませんわ。一から十まで納得だわ。


信之助を身ごもってからあっさり八雲家に戻ったのも、また八雲がそれが許したのも、お腹の子が八雲の子なら実に自然な流れですし。


ヤクザの親分に与太郎が喧嘩を売って怒るのも、八雲が信之助の父親なら腑に落ちます。 

あの親分と小夏の関係は、難しいですが男女関係ではなかったのではないのかな…と。

友人以上愛人未満の色んな情の混じった関係なのではないかと。まぁ小夏が家を出た(八雲のことをあきらめた)以降に出会ってこの人の子どもを産もうかと思ったけれど、やっぱり私が欲しいのは八雲の子どもなんだと再認識するきっかけとなったのがあの人だったのではないかなぁ…的な。(※アニメを通しで観て、小夏と八雲を結びつけたのがこの人だったことが判明します。)


少なくともあの親分とズブズブの関係なら、おかみさんに対して顔向けは出来ないだろうと思うので。でもっておかみさんは信之助の父親=(小夏が愛しているのは)八雲だということは、口にはせずとも分かっていたのではないかと。でないと「これくらいであんたとの縁が切れる方がもったいない」なんて言葉は出ないんじゃなかろうか、いくらなんでも。

 

 

30歳近く年の離れた養女と子を成した八雲が気持ち悪いという件

 

この感想は多々あるようなのですが、私としては全くそんな感情が湧かなかった理由を並べてみます。

 


・そもそも八雲は同性愛者

今回アニメを見返していてやっと理解したのですが、八雲さんは同性愛者です。そして愛した人は助六こと信さん。女性は恋愛対象外なので、小夏を性的な目で見たことは一度もないと思われる。

 


・そもそも八雲は小夏を娘のように思ったことは無い

20年近く同居していた二人ですが、きっとお互い自分たちを「親子」だと思ったことはないと思われます。

小夏はいつから八雲のことが好きだったのかと言えば、たぶん初めて出会った頃からじゃないかと思ったのですよね。髪の毛を切ってくれている時にはもう、完全に恋心を抱いていたのではないかと。

であれば八雲も、育てている内に遠からずそのことに気づいたのではないかと。自分に恋をしている女の子を娘として見るのは、八雲でなくとも難しいと思います。みよ吉の血が流れていることを思うと、もはや何かしらの脅威ですらあったかもしれない。

上記の事から、信之助が産まれた経緯には、八雲から小夏への情欲は一切無かっただろうこと、すべて小夏の意思と主導の元で行なわれたことが推測されます。

 

同性愛者の八雲ですが、小夏の「助六と八雲の血を引く子どもを産みたい」という望みは自分が男である限り絶対に叶わない願いを実現する手段でもあったが為に果たされたのでしょう。(それにしてもがんばった)

 

 

八雲が同性愛者ならみよ吉とはなんだったのか

 

初回原作を読んでいた時も、このキャラクターだけすごく謎で浮いているなと思っていたのですが、今回アニメで見返していてもやっぱりなんだかストーリーにしっくり馴染まないと感じました。

 

というのも、どう考えても八雲がみよ吉を(本人が言うほど)好いていたようには思えないんですよね。

 

みよ吉は元々満州時代の師匠の愛人でしたが、東京においてその関係は解消され、師匠に紹介された弟子の八雲に心を移します。

女を知らない八雲はそれが落語の肥やしになるのならとみよ吉と付き合い始めるも、師匠に「お前の結婚相手としてはふさわしくないから」と別れを進められ、みよ吉を捨てます。

傷心のみよ吉を捨て置けなかった助六はあっという間にみよ吉と出来上がってしまい、二人で東京を去る。

という、本作最大にむつかしいキャラクターをどう読み解くかですが、あるブログの感想にて八雲は本当は女として生まれたかったという思いを持っていたのではないか』という意見を見てあごが落ちました。

 

であるなら、みよ吉とは八雲が『もしも自分が女として生まれていたらこうありたかった女性』の姿かたちをした女だったのではないかと。

 

惚れていたのではなく憧れていた理想の女、もしも自分が女として生まれていたらこんな人間だったかもしれないというそんな女だったのでは。

 

 

そしてアニメを観終わって・・・

 

あまりにものろのろとこの記事を書いている内に観終わってしまったっていう。

 

 

いや良かった!!!

 

ほんっとうに良いアニメだった!!!! 

 

漫画では泣かなかったけれど終盤はもうぼろぼろ泣いて、ラストの「おしまい」という文字にしみじみと「よかったなぁ」という感想がにじむアニメでした。


3大ベストシーンを挙げるならば、

 

■2代目助六「芝浜」

 

■小夏の幼稚園での「寿限無(私まですっごい泣いてしまった)

 

■小夏と八雲の最後の縁側でのやりとり(号泣オブ号泣)

 


落語というものがあって、それによって結ばれた人と人との絆があって、なくなっていくものと生まれていくものがあって、すべてを内包して人の営みが続いていく。まさに人情と落語の物語でした。

 

山寺宏一石田彰関智一の三声優の仕事もすさまじかったです!

 

rakugo-shinju-anime.jp