最近の日常であった印象的なことを書きます。
私が勤めている会社は、大阪でもいわゆる一等地と呼ばれる土地にいちおうあるのですが、戦争の空襲被害が無かったことや、土地に根付いた産業があることなどから、昔ながらの家並みが残っていたり、何世代にも渡って住んでいる人が多くいます。
そういう場所では癖の強い人を見かけることがしばしばあるもので、ここ一ヶ月の間にも立て続けに三件癖の強いものと遭遇したのでご紹介します。
～恐怖！ 立ちション男～
怪談風のタイトルにしてみました。別にとくに恐怖でもなんでもない。迷惑！ ではあるけれど。
通勤路の大通りに面した区画に、ドアやガレージからゴミが溢れ出しているほどのゴミ屋敷があり、17時前、そこのお家の壁に向かって酔っぱらった40代ほどの男性が、肩と首で挟んだスマホで電話しながら立ち小便している場面に遭遇。
大阪では平成の中盤くらいまでは立ち小便する人間をごくたまに見かけたものですが、今はもう令和。久しぶりに見るその光景にもう絶句してドン引きしてしまいました。
翌日、会社で雑談中にそれを思い出し、「きのう久しぶりに立ちションしてる人を見て…」と言おうとしたら、先輩が「きのう久しぶりに立ちションして」の部分で、“私”が立ちションをしたと早とちりをし「ええええ！！！！！」と驚愕の叫びをあげ、ひどいことになりました。主語って大事。（そもそもそんな誤解をするな）
～犬～
会社から駅に向かう帰り道の途中、「ひゃっ」とか「わー」とかいう声がしたかと思うと、前方からノーリードで走って来る犬が。始めはゴールデンレトリバーの子犬かと思いましたが、若い雑種のよう。
びっくりして思わず犬に「あかんで、止まりや！」と言うと、犬はおどおどしながらもいちおう言うことを聞いてくれていったんお座りしたものの、近づくとまた走って逃げていきました。
前方にいた人たちの話や状況から察するに、どうも子ども達だけで散歩をさせていて、首輪ごとリードがすっぽ抜けた模様。あの子がちゃんと保護されておうちにもどっていることを願います。
～シャンプーハット～
この日、明け方から大雨が降っていた大阪。幸い私が出勤する頃には傘を差すか迷うくらいの小ぬか雨になっていました。道の交差するところに差しかかると、左手から自転車が走ってきました。
大阪では自転車に開いたままの傘を差せる装置『さすべえ』が広く普及していることで有名ですが、そのご婦人はめずらしく傘も差さず、シャンプーハットを被ることで雨をしのぎ、悠然と右手の方に自転車を走らせて去って行きました。
びっくりして二度見した。
シャンプーハット婦人と犬の話を同時に先輩に話したところ、犬に普通に話しかけている時点で私もだいぶ町の住民寄りの人間だと言われました。ちなみに先輩はそんな町に実家を持つガチの元住民なのですが。
話が変わりまして。
これもまた会社での雑談の話。
他部署に50歳くらいの女性社員である、仮の名前をムラエさん（未婚）という方と、ムラオさんという男性社員（バツイチ既婚）がいて、雑談中に先輩がふと「ムラオさんって結婚されていましたっけ？」と口にしたところ、先輩の隣の席の元労働組合長の男性社員が『ムラエさん』と聞き間違え、大いに驚いて「え？！ まだしてへんやろ！」と返す一幕がありました。
先輩はその段階で「いや、ムラエさんじゃなくてムラオさん…」と誤解をとき、元労働組合長から正答を得たものの、周囲には何とも言えない微妙な空気が残されたので私が引き受けることに。
「ていうか、ムラエさんほどの年齢になっても、元組合長さんの中でムラエさんは“もう”結婚しない人じゃなくて、“まだ”結婚していない人なんですねぇ」と。
入社当初、人事で給与計算の業務に就いていた経験から推測するに、ムラエさんは年収700万円～800万円くらいなんですよね。数年前には大阪市内の分譲マンションを買って、ラグドール種の猫と親御さんと暮らされている方なんですよ。大酒飲みで、やはりひどい酒飲みだった私をよく飲みに連れ出しては「あたしなー。あんたみたいな子のことがなー。ちょっと心配やねん」と色んな忠告をしてくれたのはこの話には関係がないので置いておくとして。
ずっと未婚でお金に不自由していない50代の女性が、今さらなんで結婚すると思っているんだろう。
やっぱり既婚者で子どももいる50代男性＝マジョリティにとって、未婚の人間はただ未婚というだけで不完全な状態と捉えられているんだと、マジョリティの言うところの『世間の常識』みたいなものの一端に触れた気がして純粋にびっくりしてしまいました。
それで思い出したのが、先輩の妹さんのこと。
先輩の妹さんは私と同い年で、外資系の企業でバリバリ働いて稼ぎまくっているキャリアウーマン。仕事が楽しすぎるのか30を過ぎてもまったく結婚する気配がなかったのですが、今年の4月に結婚を決意を固め、家族に報告したそう。
先輩は先述のとおり会社の近くに実家があるので、ある日のお昼休みに実家へ行き、用事を済ませた折にお父さんと顔を合わせたそうなのですが、お父さんは妹さんの結婚にそれはそれは喜ばれていたのだとか。そしてあまりに浮かれていたせいか、それまで一度も言ったことのないようなことを娘である先輩に漏らしたのだそう。
先輩はお父さんがなんと言ったのかはどうしても教えてくれなかったのですが、ともあれ先輩はそれを聞いて、私は今まで父のことを母よりも自分のことを理解してくれている存在で、父の私達娘への愛は、私達がどんな状態でも変わらないものだと信じていたけれど、それは違ったのかもしれない、というようなことを思ったそうです。
私は大学受験の第一志望の大学に落ちたことがそれまでの人生で最大の挫折で、でも父の言葉によって救われて、だけど父の価値観が本当は今日知ったものなのだとしたら、あの時の言葉の意味は私が受け止めたものとは違うのかもしれない、と先輩が言っていたのがものすごく印象的でした。ほんとうにどんなことを言われたのかすごく気になる。
けれどもマジョリティ男性の世間一般の常識、つまり『家父長制』的価値観に触れたんだろうなと思います。先輩も既婚者で二児の母なのでマジョリティ側なのですが。
家父長制については今年はこれから何冊か読んでさらに理解を深めていきたいと考えている次第です。
そんな雑談の記録でした。
