ごんブロ

だいたい月に一度、本や映画の感想を書きます

2022年12月の振り返りと読書記録

明けましておめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願いいたします。

短いお正月休みを精一杯堪能しながら、ブラックフライデーで買ったまま放置していたChromebookを初めて駆使して、この記事を書いています。

いやあ、Chromebook、めちゃくちゃ良い。まじで起動1秒。今まで8年くらい前に買ったWindowsを使っていたのですが、起動するまでに30分以上かかっていたことを思うと、イノベーションが凄まじい。

ということで、先月を振り返っていきます。

 

 

 

1week

Gotoトラベルを利用して、一泊二日の鹿児島旅行へ。飛行機を使った旅行なんてほんとうに久しぶり!

 

 

まずはずっと行きたかった、大好きな向田邦子の展示があるかごしま近代文学館を訪問。

 

 

生原稿やエッセイのプロット、向田さんの愛用されていた洋服、「海苔のお皿」こと九谷焼のお皿まで展示されていて震えた。あとは留守電の音声も・・・。写真NGということで撮れなかったのが本当に惜しい。

その後は島津家のお家・仙巌園にも行くも、閉園1時間前だった上に雨まで降ってきて、非常に残念な結果に。

 

仙巌園はまた行きたいなぁ〜〜〜。本当にものすごく良いお庭でした。

 

雨は2日目にも降り通し、一路霧島へ向かったのですが、あまり良い記憶がなく・・・。

 

お昼を頂いたきりん商店はとても良かったです。

 

畳のお座敷でうまいカレー食べて絵本読んでげらげら笑う日曜日は最高。

 

 

2week

鹿児島で乗り回した車の運転技術を忘れぬうちに、一人でシェアカーに乗って大きな公園に行ったり、ワークマンに行ったり。

 

 

 

週末は天満で今年度一発目の忘年会でした。

 

 

二次会のロイヤルホスト

ロイヤルホスト、近場になくてむちゃくちゃ行きづらいけれどもっと頻繁に通いたい。

 

 

 

3week

数年ぶりに読書会に行きました。

中津の古民家まちライブラリー「中津ぱぶり家」で開催された読書会で、参加者たちがそれぞれ今年いちばん良かった本を紹介し合うという和気藹々とした空気の中、ひたすら本の話を聞いたり話したり。

あまりにも楽しくて、5時間ぶっとおしでしゃべり続け、帰りの電車の中では片頭痛を発症するほど盛り上がった。

奇遇なことに、同い年で高校教師をされている方が私と同じ本を持参してきており、もう仲良くなるしかないじゃん・・・という出会いがあったので、ほんと〜〜〜に行って良かった。

 

 

4week

職場の忘年会と、小説スクールの仲間との忘年会。

小説スクールのメンバーと会うのは2年ぶりくらいだったので、とても楽しかったです。

講師である小説家の先生もいらっしゃっていて、先生も交えてリレー小説をしたところ、プロの風呂敷の畳み方を目の前で見ることになり、感服としかいいようがなかった。SSは最後の4行なんだなぁ・・・。

 

 

5week

ヨガ納めと、読書会のメンバー5人で2022年最後の忘年会。

仲良くなりたい人とはなるはやで2回目の約束を取り付けるタイプの女なので、速攻で飲み会の段取りを組んで距離を縮めておきました。この感覚、コロナで失われて久しかったので懐かしい。



読んだ本

 

クレア・キップス『ある小さなスズメの記録』

一昨年読んだ天才ヨウムの本『アレックスと私』が大当たりだったので、鳥の本って名作が多いのでは? という直感で読んでみました。

1940年の戦時下のロンドンで、著者は生まれたばかりのスズメの雛を拾う。

やがてクラレンスと名付けられたその小さなスズメと著者は12年7ヶ月を共に過ごしたという、人とスズメのお話。

気楽な読み物のつもりで読んだら、いい意味で裏切られる、生の喜びと愛の物語でした。

鳥の本、やっぱり名作ぞろいなのでは?



東畑開人『聞く技術・聞いてもらう技術』

臨床心理学者であり、精神科医である著者が、何十年に及ぶ精神医学の現場で培い、学んだ末に分かったこと、それは人の話を「聴く」ことは出来ても、「聞く」ことのなんと難しいことか・・・という本。

そして今の世は「聞く」ことの不全があちこちで起きているという警鐘も鳴らす。

精神科医がオフィスで患者の話を「聴く」よりも、患者の周りにいる人たちから気軽に「聞いてもらう」ことのほうに価値がある、「聞く」「聞いてもらう」に宿る力はそれだけすごいという著者の結論には、よく精神科医がそれを書けたな・・・とちょっと驚きました。

けれど肝心の、人に話を「聞いてもらう技術」というのが、「一緒にトイレに行く」「一緒に帰る」「悪口を言う」など、それ今までお前ら男がさんざん女子がやって馬鹿にしてきたことやんけ、というものばかりで唖然としたし、著者がそれにチラとでも触れないことにはちょっと違和感を抱きました。

要するに女性が自然とやっているコミュニケーションが「聞く」「聞いてもらう」で、それを一段劣るものと定義してきたホモソ社会が苦しみ、それぞれの家庭の妻だったりをも苦しめているっていう。

やっぱりホモソーシャルだけだと色々ひずみが出るんだな、という理解に至る一冊でした。



東山彰良『流』

2015年直木賞の受賞作の傑作青春小説。

それほど昔の作品というわけではないのだけれど、70年代を舞台としているからか、それとも著者の作風のなのか、筒井康隆中島らもの文章のような90年代風の文章で、そこからしてノスタルジックな味わいだった。とても良かったです。

その本が真に優れた良い小説かどうかというものは、実は読んでいる最中よりも、読み終わったあとになって初めて分かる部分があって、読み終わって時間が経っているのに、ふっと日常の中で作中のシーンを思い出すことが多い小説は、真の名作なのだと思います。本書はまさにそれでした。



石井美保『めぐりながれるものの人類学』

京大の人類学の教授のエッセイ。

難しい言葉を使うことなく、とても難しい、けれど誰しもそれについて一度は考えたことがあるというような概念について書かれたエッセイで、読むのにかなり時間がかかりました。文化人類学とはすごい学問なんだな。

早くもけっこう忘れてしまっているから、手元に置いておいたほうがいいかも。

「そうならなければならないから」を英訳した題のエッセイがとても良かった。



凪良ゆう『汝、星のごとく』

2022年で3番目に泣いた本!

くわしくは後述。



小川哲『君のクイズ』

『汝、星のごとく』と同じく、2022年ベスト本に感想を書いているので省略します。

 

gonzarezmm.hatenablog.com

 

いま選考中の直木賞は、きっと小川哲さんの『地図と拳』が受賞するんだろうな〜と思いつつも、『汝、星のごとく』もW受賞しないかな〜〜〜?!? と注視しています。



皆川博子『恋紅』

 

皆川博子といえば、私にとっては少年愛・耽美・幻想小説・ミステリーのイメージだったのですが、80年代〜90年代は時代小説もがっつり書いておられたということに、本書を読んだり調べたりしていて初めて知りました。

本当に、なんて引き出しと表現の幅の広い作家なのか。

幕末(慶応)から明治にかけての江戸で、吉原遊廓の楼主の家に生まれて大切に育てられた一人娘、ゆうを主人公に、彼女の一途な恋と半生が描かれる。

「男にすがりついていく女の情念・・・」みたいなあらすじだったので、なんとなく予想していた流れとは裏腹に、普通に主人公たちは両想いなので、あらすじに文句をつけたくなりました。

サブキャラの澤村田之助の人生が気になりすぎていたら、彼を主人公に据えた『花闇』もあると知り、皆川博子先生の気配り力に敬服。

 

 

ということで、12月に読んだ本7冊と振り返りでした。