私は文字が読めるようになった幼少の頃より今日に至るまでの間にそれはたくさんの本や漫画を読んできたにも関わらず、今までに好きな作品の作者に直接感想を伝えたりしたことがほぼありません。
それは何故かというと、つまるところ「恥ずかしい」からです。
恥ずかしいよね?
好きな作者に「好き」とか言うの、
超恥ずかしいよね???
というか、単純に絶対にキモい。
すきなものに対して人は確実にキモくなるのに、そのキモさ溢れる文章をよりにもよって作者(すきなひと)へ読んでもらいたくて送りつけるって、端的に言って変態みがある。
何をどう言い繕おうと、結局のところキモい行為なんですよ。(※変態、キモい=悪ではない)
しかも私の感想ってなんかマニアックというか、視点が若干変というか。さすがに10年以上も好きな作品の感想記事を趣味で書き続けてきたらそりゃ分かります。私のガチ感想文ってキモいです。
キモいからこそ恥ずかしい。キモい姿を作者(すきなひと)に直接見せるのはめちゃくちゃ恥ずかしい上に、「あ、ありがとうございます…はは…(うわあ…)」ってドン引きされたらショックと恥ずかしさののあまり素手で喉を掻き千切りたくなる。
だから私は感想は送らない。ひっそりとmixiやブログで愛を書き殴るのみ。
…だったのですが。
はてな匿名ダイアリーのこんな記事を読みまして。
忙しくて読んでいられない人のために説明すると、同人作家へ毎回ファンレターを手渡ししていた読者のお手紙が、その作者にとって唯一の心の支えだったというハートフルな実話。(しかし結末は切ない)
こちらを読んで、やっぱり「好きな人に好きと言わないこと」のデメリットの大きさについて考えさせられました。
それでもって、それ(好きな人に好きと言わないこと)って別にエンタメ、サブカルに限った話ではないんですよね。人間関係についても同じじゃないですか。
「好きなのに好きと言わなかった」がために、相手の気持ちが離れてしまったなんていうこと、恋愛関係でも友達関係でもめちゃくちゃよくある話なんですよね。
もっとこまめに「好きだ」と言っていれば、自分の気持ちを隠すなんていうことをしなければ、実っただろう恋、変わっただろう関係なんてもう自分の人生を見渡すだけでも500億(地球人口より多い)ぐらいありますよ。もうジャブジャブ取り逃してきた人生ですよ。
それでもってこれって、かなり凡庸なことでもある。
みんな基本的に好きな人に「好き」って言わないし、だからみんな普通は恋は実らないし恋人には心変わりをされるし友達に特別扱いされない。
逆に言うと、いつも恋を実らせるし配偶者とラブラブだし友達からとても大切にされる人というのは、自分の愛情や感謝の気持ちをストレートかつこまめに表現しているんですよ。
何故私達凡夫はそれが出来ないかというと、やっぱり好きな人に好きと伝えるには勇気が必要だから。
キモい自分をさらけ出すのが怖いから。拒否されて傷つくことが怖いから、好きと言えない。
「好きと言ったら負けな気がする」という心理が働いているわけです。
でも実は、ここからはもはや恋愛の真理になりますが、恋愛って負けを認めることこそが勝つ奥義なんです。負けを認められる方が強い。自分の負けを認めて「好き」と言える人が、実は最強。何故ならそれは勇気がなければ出来ないことだから。
それが出来て初めて凡夫から逸材、『いつも恋を実らせるし配偶者とラブラブだし友達からとても大切にされる人』になれるわけです。
そんな逸材にはなれないかもしれないけれど、でも好きなのに「好き」と言えないような人間のままでは確実になれないのです。
ようやくここで少し話が関わってきたので戻しますと、好きな作者に「あなたの作品が好き」と言わなければ起こりうるデメリットについて。
好きと言わないメリットとしては、恥をかかない、(感想を伝える手段に必要な)時間(やお金)を失わない。
対するデメリットの中で最悪のものは、作者が「誰も自分の作品なんて求めていないんだ…」と思い筆を折る事。
もうどう考えてもメリットに対しデメリットが大きすぎる。
そんなデメリットがあるくらいなら、自分の恥なんてどうだっていいし時間もお金も些細な損失だと言える。
あとやっぱり、我々キモいファンが作者にお手紙を送るのって「作者からの返事」を期待しているからじゃないですか。返事が要らないなら一人で何かに書き殴ればいいのに、わざわざ作者本人に伝えるってことはやっぱり、返事が欲しいわけですよ。神からの。
我々キモいファンの最終理想願望は、神から「特別なファン」扱いされること、神の心の支えになることですよ。
だけどそんなことはおろか、返事だって返ってこないと思っているし、感想を送ったら返事を期待してしまってその期待が外れることが寂しいから送らない。
だから匿名ダイアリーの増田さんの件は、残念なことではあったけれど、同時にめちゃくちゃ幸せなことでもあったと思うのです。
作者に「好き」と伝えたところで返事が返ってくることはおろか、「特別なファン」扱いされることなんてほぼありません。けれど、まず「好き」だと伝えなければその「特別なファン」になれる可能性はゼロのままなんだと。
「特別なファンを目指す」ことってどうなの? という思いも拭いきれませんが、でもやっぱり、好きだと思える作品をこの世に生み出した人に「好きです」と言い続けることの意味や意義を、もっとおおごとに捉えて実際に実行すべきではないかと思うようになりました。
たとえそれが何の足しにもならなくとも、勇気を使った分だけ自分の人間関係でも己の「好き」を相手に伝えることにためらいがなくなりそうですし。
ということで、今後は好きな作者にはちゃんと好きと伝えようと思いますというお話。