ごんブロ

だいたい月に一度、本や映画の感想を書きます

ごんぶと日誌(2020.3.23~3.28)

何事も起こらない普通の日常第三弾。

武田百合子の『富士日記』を読んでいる影響で、今週は実験的に六日分毎日書いてみたものを載せてみます。こちらの形式の方が書く分には楽しかったのですが、読む方は大変だと思います。巣ごもりの退屈しのぎにでもして頂ければ幸甚です。

 

三月二十三日 月曜日

原付を使っての初めての通勤に挑む。練習の甲斐あり駅まで問題なく到着するも、駅前の地下駐輪場に侵入するのに大変な思いをする。

地下駐輪場の入り口である階段には中央に二輪車用の溝がついており、そこにタイヤを乗せたところ、物理法則にのっとりものすごい勢いで原付(約80kg)が前方に進み、手を離したら大事故に繋がりかねないためハンドルを離す選択肢は無く、転倒したら私の力では二度と起こせないだろうことからもちろん倒れることも出来ず、死に物狂いで約80kgの原付を引っ張って支えながらもほとんど引きずられるようにして地下に到着。親切な駐輪場の職員の方々に助けられて駐輪手続きを終え、ほうほうのていで地上に出ると、乗る予定だった電車の扉がちょうど閉まるところだった。

 

会社が終わったあとは間遠になっていた耳鼻科へ。舌下免疫治療という、アレルギー治療の一回目を受ける。

私はレベル3(最大は6)のダニアレルギー持ちで、舌下免疫治療というのは、タブレット状に固めたアレルゲン物質を毎日一分舐めるのを三年ほど続けることでアレルギー根絶を目指すという荒療治。

初回はお医者さんから各種説明を受け、先生手ずからタブレットを舌下に置いてもらい様子を見る。すると三分もしない内に舌がピリピリし始め、次いで喉と耳の中が痒くなったので驚く。タブレットは見た目も味もラムネみたいだけれど、まごうことなきダニらしい。

これからは三年ほど毎日ダニを摂取して生きてゆきます。(一年ほどで八割が治るらしい)

 

耳鼻科のあとはバーのバイトに。会社の休み前にしか働けないので、これは完全にイレギュラー。他に入る人がおらず、マスターに二十三時まででいいからお願いと言われたので仕方なく。

耳鼻科がめちゃくちゃ長引いてご飯を食べる暇がなかったので、出勤時間前にバーの片隅でコンビニで買った焼きビーフンを食べる。

お客さん達に朝起きた原付引きずられ死にかけ事件のことを話すと、ワタナベさんという穏やかな方に「そういう時は前輪ブレーキをかけるとええんやで」と教えてもらう。原付に乗るのが久しぶりすぎて、前輪ブレーキの存在をすっかり忘れていた。(ずっと後輪ブレーキでなんとなく止まっていた)

 

家に帰ると歯磨き後でまだ寝ていなかった愛犬(プードル・十才)に迎えられる。いつも通り元気にしっぽを振って私の口を舐めていたが、母いわくつい先ほど謎の下痢便を出したとのこと。ごはんを食べる時も途中で食べるのをやめたりと様子が変で、下痢便も散歩から帰ってきて二度目という。

年なので季節の変わり目に胃腸炎を起こすことがあり、今回もそれかもしれないし、もしくは散歩中に何か拾い食いをしたのかもしれない…という母と共に犬を撫でて寝かしつけたあと、自分も寝る準備をする。

寝る前に自分の口内炎マヌカハニーを塗るついでに余った蜂蜜を愛犬(スピッツ・十二才・歯周病)の歯ぐきになすりつけに二階に行く。

スピッツのあとプードルの口元にも持っていくと「なにこれ?!!」という風に美味しそうに舐めたかと思うと、それが刺激になったらしく胃の中にあった消化途中のフードをすべて吐く。たちまち母がやって来て「何したん?!!」とどやされる。

プードルは時々お腹に差し込みが来るのか寒いのか、時おりぶるぶると震えてものすごくしんどそう。一時間程度であまりの体調の変化に、朝にはつめたく固くなっているのではという不安からなかなか眠れず。自分の部屋のベッドからスマホでペットカメラを覗くと、暗闇の中でずっと母が犬のお腹を撫でていた。

 

三月二十四日 火曜日

朝起きてまずスマホからペットカメラに繋ぐ。いつもベッドで眠る母が、プードルの寝床の横に布団を敷いて寝ていた。あとで聞くと一晩中お腹を撫でていたとのこと。

会社に行く前に様子を見に行くと、プードルもあまり寝ていないようですぐに目を覚ますも、その目がやたらとキラキラと「ボク、愛されてんねん」とでも言うように輝いており、それほど調子は悪くなさそう。母は起きず。

会社にいる間もちょこちょことペットカメラを見たけれど、特に異変が起きた様子もなく安心する。

寝不足と原付80kgを死に物狂いで引っ張ったせいで筋肉痛がひどいので一日中だるく、島田荘司の『占星術殺人事件』を読みながら風呂にも入らず寝る。

 

三月二十五日 水曜日

いつもは会社が休みなのだけれど、堂島で行われる「データ分析力養成講座」なるものを受講するために七時半にいやいや起きる。

私は会社で計数管理のようなことをするよう求められているのだけれど、数字の分析力がまるでないためこの数年雑用しかしておらず、そろそろくびにされてもおかしくないのでようやく勉強するポーズを見せ始めた次第である。

講座は五万円以上もする高額な講座なだけあって、レベルが高く面白かったのですが、内容の大半がマーケティングのためのデータ分析で、私が知りたい利益や経費から状況を分析する手法はほんの一部分しか紹介されず、しかしもろもろ勉強にはなるといった代物でありました。

お昼はいかにも堂島らしいクラフトバーガー屋さんに入り、しゃらくさいハンバーガー(八八〇円)を食べる。

朝十時から夕方六時まである長丁場の講義が終わる頃にはすっかりヘトヘトになってしまい、そんなに疲れているのに『占星術殺人事件』を読み終えたい一心で目を酷使し続け、片頭痛でうんうん唸りながら深夜一時過ぎに就寝。

占星術殺人事件』は面白かったです。

 

三月二十六日 木曜日

昨日の代休で昼頃まで寝ていたら、愛犬のスピッツに二階から起こされてベッドから這い出す。挨拶しに行くとプードルと私の膝を争ったあと「ヨーグルトを持ってこい」というので従う。(我が家では毎日朝ごはんのあとに少量の無糖ヨーグルトとすりおろしりんごを与えている。)

めちゃくちゃお腹がすいていたので、甘酒ヨーグルトを食べたあと、寝間着のまま大量の納豆チャーハンをつくりモリモリと食す。十四時過ぎ、原付に乗って繁華街の方面へ出てドラッグストアで四千円、本屋で三千円ほど買い物をする。今回買った本は以下の三冊。

ノースライト』/横山秀夫 『富士日記 中・下』/武田百合子

富士日記』上巻を探して三件目に入った本屋は中高生の頃よく通っていた本屋で、この不況の中いまだに営業を続けていることに驚く。せわしそうに電話をする店員さんが話す内容から察するに、教科書販売業のおかげで潰れずにいる模様。

見覚えのある書棚と空気を嗅いでいると、レジに立つ十代くらいの店員さんが中学生時代の友達のように思えた。

 

三月二十七日 金曜日

朝から雨模様でずっと眠い。休み明けということもあり、びっくりするほど仕事が手につかなかった。

十八時半、シナリオスクールのMさんと会い、刷り上がった同人誌を頂く。その後イタリアンバルでちょい呑みをしながら、次の同人誌は「ぼくの考えたさいこうのへんたい」というコンセプトで作ろうかという話で盛り上がる。実現するかどうかは不明。

帰り道で同人誌を読むと、いかに私だけが異様に思い詰めて書いたのかがよく分かる仕上がりとなっていた。他の人が書いたサラリとハッピーエンドを迎える話を読み、こういう肩の力が抜けたものが書ければなぁと思う。

 

三月二十八日 土曜日

大阪では新型コロナの感染拡大を受け、週末の外出自粛要請が発令されているけれど、普通に仕事なので会社に行く。

とはいえ外出を控えるようお願いされているので、かねてより二十九日に予定していたランチをキャンセルするためお昼過ぎにお店へ電話する。お店の方は慣れているのか普通の調子で了承してくれ有り難かった。

夕方から大粒の雨が降り出すも、傘を持って出なかったので駅からタクシーを使って帰宅する。五〇〇円のビニール傘を買って雨降りのものすごい山を登って帰るくらいなら、六八〇円を払ってタクシーに運んでもらう方がよほどましという算段である。

夜、金曜日の晩飯の残りを食べてバーのバイトに行く。

雨だし外出自粛だし絶対にお客さんも少なかろうと踏んでいた通り、ひまな夜だった。梅酒のお湯割りとウイスキーのロックを飲んで、二十三時過ぎに上がらせてもらう。

家に帰ってから、昔『mixi』に書いたとある本の感想文を読み返したくなり『mixi』にログインする。目当ての内容は2009年の日記に書かれてあったが、そのまま2008年~2013年あたりの頃の日記を読みふける。二十歳当時の自分の日記、めちゃくちゃ面白い。もっと残しておけばよかった。