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【関係修復マニュアル】バ先のバーのマスターの謝り方がさすがに上手かった話

週五でオフィスワークして月三でバーテンのバイトをしています。

本業からきちんとお給料を得ているにも関わらずバイトをしているのは「地元で友達が欲しい」という理由からなのですが、働いて二年目になってもさほど友達が増えないため、最近ではバイトを辞めようかと思っていたところ、先日働いている最中にマスターから理不尽に怒られるという事件が起きました。

マスターは私より七つほど年上の、陽気で穏やかな人柄がお客さんから愛される優しい方で、理不尽に怒るといったことは今回が初めての異例といっていい事態だったため、私は大変驚くと共にショックを受け、心はますます辞職に傾きました。

しかし、事件後初めての勤務日のマスターの対応によって、辞めるのをやめることに相成りました。

私は一度嫌いになった人とはそのままお別れすることが定石であるため、こういった方向転換は大変めずらしく、それだけにマスターの謝罪力の高さを思い知ったので、ここにマスターが行ったことを詳しく書き出して振り返り、上手な謝罪について考えていきたいと思います。



◎やらかし後、12時間以内にまずLINEで謝る

 

『昨日はごめんね。ちょっと疲れてて。言い方わるかったです』(原文ママ

 

マスターがやらかしたのには当然私にも非があったのですが、そのことには触れずに簡潔に謝っているのがポイント。

最重要なのが、ここで「なぜ自分があの時怒ったか」という説明(弁解/いいわけ)をしていないこと。それをされた場合、恐らく私はブチギレ返し、その時点で終了したと思われます。

そう考えると、謝罪と弁解は【混ぜるな危険】の関係にあることがよくわかります。

弁解は謝罪よりも浅い段階でしか通用せず、謝罪をしなければならないほどの深刻な事態に陥っている時は、決して弁解せず、謝罪に徹するべき。

ということで、『ちょっと疲れてて』というのも余計。このLINE謝罪を添削するとすれば、

 

『昨日はごめんね。言い方わるかったです。反省しています』

 

がベストであると思われます。



◎顔を合わしたら、いのいちばんに謝る

 

マスターの謝罪LINEに対し、私が『こちらこそ申し訳ありませんでした』と返して一週間。わだかまりは解けないまま、私は「今日働いて無理だと思ったらもう辞めよう」という気持ちで仕事に臨みました。

言わば臨戦態勢。緊張状態で入店し、マスターと顔を合わせたところ、まず一発目に「この間はごめんね!」と謝られました。

この対応は非常に有効であったと言わざるを得ません。

とはいえ、その後続いた言葉に、やらかしについて矮小化しうまく丸めこもうという意図が透けて見えたため、私はなぁなぁにする気はないでという意志を言葉にしてみせたところ、空気は冷えつき、ギスギスした雰囲気の中仕事が始まりました。

 

マスターの対応が上手だったなと思うのはここからです。



◎相手が怒っている場合は、相手の怒りを尊重しつつも、自らは平常にふるまう

 

この間、母に多く非があることで母と大いに揉め、その後冷静になった母から謝罪されたにも関わらず、二週間近く仲がこじれてしまったことがあります。

というのも、母は謝ったらすぐに許される(私の態度が平常どおりになる)ことを望んでいたのですが、私は怒り心頭状態にあり、とてもすぐに平常にはなれなかったのはもちろん、自分の気が済むまで怒っていたかったのです。(※謝罪された際に、数日放っておいてほしいことは伝えていた)

しかし私の気が済んだ頃には母が気分を害していたので冷戦は続行することになり、その結果の二週間近い膠着でした。

これは自分でも厄介だなぁと身をもって知ったのですが、人は他人の都合で怒りを治めることを求められると、余計に怒りが長引くのですね。

怒っている人に怒らせた人が「怒らないで、元通りになって」と言うのは逆効果であり、本人が冷静になるまで怒り切らせておいた方がいい。

 

マスターは私が怒っていることを察すると、無理に仲直りしようとせず、かといって機嫌を悪くすることもなく(これが本当にすごい)、そっとしつつも平常通りに振舞いました。

その態度によって、私は自分の怒りが尊重され、「君の怒りには正当性がある」と認めてもらえたように感じたことで心がケアされ、武装解除に至ったのでした。これは自分でも心の動きを追っていて非常に興味深く感じる現象で、まさにプロによる業だと言えます。

 

相手が感じている怒りを尊重するという手法はジャンシー・ダンの『子どもが生まれても夫を憎まずにすむ方法』という本の中で紹介されている「FBIネゴシエーターが教える危機介入プログラム」にもあったような気がするので、また読み返してみたい。

 

子どもが生まれても夫を憎まずにすむ方法

子どもが生まれても夫を憎まずにすむ方法

 

 

バーのバイトでは当初の目標であった「友達がほしい」は叶えられていないものの、マスターから色々と学ぶことがあって辞めずにきたのですが、今回の件を通してまだまだこの人からは学ぶことがあるなと思わされました。

もし今後の人生で大切な人を怒らせてしまい、関係修復が急務とされる時にはこの記事を読み返し、私の辞職の意思を見事に翻意させたマスターの手腕を思い出したい。

そんな最近の日常。