ごんブロ

だいたい月に一度、本や映画の感想を書きます

2023年5月の振り返りと読書記録

5月は特に何もなく、ことし始まって以来最大にのんびり過ごしていたので、週ごとに振り返ります。

そういえばブログのプロフ画像を、長年使っていた友だち謹製の美ゴリラから、ロートレックの洗濯婦に変更しています。ちょっとした気分の変化というやつです。

 

 

1week

世間ではGWだけれど、とにかく連休というものが無い業界で働いているので、いつもどおりの日常を過ごす。

とはいえ2日間は休みだったので、とあるいきさつで申し込んだ中崎町のアクセサリー屋さんでやっている占いに行く。

 

 

いま気づいたけれど、内容をほとんど覚えていない。この日以降、毎日紙の日記をつけるようになったので、恐らくそこにくわしく書いてあると思われる。こんど読み返そう。

占いに行ったあとは、京橋の『NAGARABBIT CAFE』のボードゲーム会に参加する。

『ディセプション』という初めてやったボドゲが面白くて盛り上がった。

 

 

色んなボドゲを23時ぐらいまでしたけれど、最後はひたすらトランプの大富豪をしていた。めちゃくちゃ楽しかった。

 

日曜日にも再び『NAGARABBIT CAFE』のマーダーミステリー会に行くも、この日にプレイした『星空のマリス』が好みのマダミスではなく、自分にとって理想的なマダミスとは何かについていろいろ考えるようになる。



2week

コロナ5類移行によってマスクをしなくなり、たったの数日でなんと風邪を引いて2日寝こむ。

自分の体のひよわさに改めて驚いた。というか、GWの真ん中に冬物寝具を洗濯して片づけたとたん、週末にまたやたらと寒くなるも、面倒で毛布を使わずに寝ていたことが最大の敗因だったと思う。マスクはその次。(ひよわなことに変わりはない)

ごく軽い風邪だったけれど、ワクチンの副作用よりもしんどいコンディションは久しぶりだった。

風邪が治った2日後、もともと予約していた美容院に行く。病み上がりの仕事帰りであまり頭が働いていなかったことに加え、喋ることが喉に負担だったので極力喋らずにいたところ、なぜか(自分で注文したんや)髪の色が鮮やかなワインレッド色になってしまう。

春服がびっくりするほど合わないので、染め直そうかと周囲に相談したら「べつにええやん」と言われ、たしかにそこまでの季節感へのこだわりを持っているのは自分自身くらいなので、まぁいいかという気になる。



3week

長居公園で開催中の『毒』展にやっと行く。やっとというのは、チケットを買ったのは開催前の3月だったので。

 

みんな撮るやつ

 

大阪自然史博物館で開催しているのかと思いきや、ネイチャーホールという小さな建物で開催の、だいぶ子ども向けというか、万人が楽しめるような展示だったこと、そのゆえにライト層にも大人気で、ど平日にもかかわらずかなりの賑わいでした。

 

『毒』を見たあとは、ローズウィーク期間中の植物園へ。

 

 

想像以上の数のバラが咲き誇っていて、夢の世界にいるようなひとときを過ごしました。

 

 

これまでにバラ園は、大阪市中之島公園、靭公園、吹田市万博記念公園ひらかたパークのローズガーデンなどいろいろと見てきたけれど、長居植物園のバラ園がトップだと思う。きっと、ものすごく優秀な園芸師がいるのではとにらんでいる。配色やバランスも良すぎる。

 

 

バラ見は2年くらい前からなんとなく始めた趣味だけれど、たくさんのバラに囲まれ、その美に驚嘆し、大量に写真を撮ると、なぜか翌朝の脳が異様に整うなど、非常に精神衛生に良いことを実感しているので今後も続けます。すごいストレス解消になる。

 

金曜日、今月2回目の『NAGARABBIT CAFE』マーダーミステリー会にて罪と罰の図書館』をプレイ。

 

 

とても面白かった。やっぱりグループSNEが作ったマダミスにはキャラクターに深みがある。

 

日曜日。King Gnuの長居ヤンマースタジアムライブに参戦。

 

 

あまり音楽を聴かないので、音楽ライブに行くのはこれが人生で3回目、かつ初めてのスタジアムライブ。

とても楽しかった。King Gnuはすごく好きなわけではないけれど、でも一万円以上のお金を払ってライブに行ってもいいくらいには好き、くらいのアーティスト。歌詞まで知っているのは『白日』だけだったので、やっぱりほとんどの歌が歌えるくらい好きなほうがもっと楽しいんだろうな、という感想を抱きつつも、4万人近い人間と一緒にスタジアムで盛り上がるという行為自体がとても楽しいので、良いライブだった。

年に一度行くことがあるかないかという長居公園に、一週間で二度訪れた週だった。



4week

奈良県富雄にある「霊山寺」へ行く。

goo.gl

 

バラ園があるお寺として有名らしいので、ドライブがてら行きました。

これまでの運転としてはこれが最大の距離。山を削り取って出来た、巨大な阪奈道路の上り線を車で登っているときの高揚感、一人で運転してここまで来たという感慨が、ちょっと忘がたい。

霊山寺から東に10キロ(20分)走れば奈良公園なので、ついに奈良公園が射程距離に入った感じがある。

バラもとても綺麗だった。

 

 

バラ園の奥にはカフェがあって、目にも楽しいバラスイーツが味わえる。

 

 

 

土曜日に劇団ながらびっとのカフェ公演vol.3『ご注文はガーリック抜きで』を観る。

 

公式HPから拝借しました

 

じつは5月は週1以上のペースで遊びに行っているカフェ『NAGARABBIT CAFE』の店主森永氏は『劇団ながらびっと』を主宰しており、私がいつも遊んでもらっているマダミスメンバーの半分くらいも劇団員だったりする。

カフェ公演とは、演劇×飲食が組み合わさった、イマーシブシアター(没入型演劇)の一種。観客はカフェで喫食していたら、同じ空間のなかで突如演劇が始まるという、これまでに無い観劇が楽しめるというもの。

じっさい私にとっては初めてのイマーシブシアターで、贔屓目もあるかもしれないけれど、ものすごく面白かったです。色んな演出を取り入れたコメディ劇をかぶりつきの臨場感MAXの席で体験できるだけでも楽しいのに、演技もストーリーも本格的で、40分が一瞬でした。

宝塚ですら「演者が豆粒で面白くない」とハマらなかった私ですが、むしろだからこそ、イマーシブシアターは自分の好みに合致しているのだと思う。ほかのイマーシブシアターも観てみたいな。

 

日曜日は無目的に京都市内に遊びに行く。

以前行った神宮丸太町の台湾食堂でランチを食べ、その真裏の本屋さん『誠光社』でカート・ヴォネガットを買って、京都御所で持参した本を読んで過ごした。

 

 

京都御所は緑豊かな広大な敷地に色んな人たちが思い思いに静かに過ごしていて、すごくリラックス出来た。

自然の中で読書をする時間、最高すぎたので積極的に今後も人生に取り入れていきたい。自然も読書も大好きなのに、この組み合わせに開眼したのが遅すぎである。(本は家で読みたい派だったので…)

 

 

今月の良かったカフェ

 

中崎町『cafe太陽ノ塔 GREEN WEST』

お店のHPからお借りしました①

 

今や大阪のカフェの聖地・中崎町のなかでも不動の人気カフェ。それも大納得の、めちゃ映え・ハイセンス・レトロ可愛い、最高の素敵カフェでした。このお店のインテリア、大好きだわ~~~。

 

お店のHPからお借りしました②

 

goo.gl

 

好みのセンスの空間でゆったりしていると、如実に精神が癒されるものだということを実感したお店。

ここまで空間がおしゃれだと、逆説的にスイーツの味は特に期待していなかったというのに、頼んだスイーツがむちゃくちゃ美味しかったことでまた大感激。

 

 

必ずまた癒されに行く。

すぐ近くにある別館や本店にも行って制覇したい。

 

長居公園『ヤンマーマルシェ長居』

goo.gl

 

数年ぶりに訪れた長居公園にあたらしく出来ていたカフェがなかなかイケてて良かった。

こういう大きな公園併設のカフェって、料理のレベルは二の次なところがあるけれど、ヤンマーマルシェには企業努力が感じられます。とても良かった。

長居公園、昔と違ってとっても綺麗になっていたし、植物園は最高だし、年に一度と言わずに積極的にお出かけしたい。ヤンマーマルシェもあるし!

 

長居の博物館のクジラの骨、ザットン

 

読んだ本

上野千鶴子『近代家族の成立と終焉』

面白かった。日本でいちばん有名だろう社会科学の研究者、上野千鶴子先生が30年ほど前に上梓した本。

「家族」とはなんだろう。21世紀の日本で生きる人間にとって、誰ひとり無関係でない疑問を、当代随一の社会学者が洞察していく。ものすごくエキサイティングで知的興奮に満ちた読書だった。

そもそも私たちが当然のように考えてる「家族」のかたちが日本に根付いたのは、たかだか150年前に過ぎない。明治維新以降、人口の1割にも満たない武士階級特有の家族制度が日本の規範となるまで、日本人の9割以上は、自分たちに合った家族の形態を成していた。近代化と都市集中化が進み、核家族が主流になるにつれ、もともと崩壊を約束されていた近代家族制度は、至るところでほころびを見せるようになった…という持論は非常にわかりやすく、なるほどの連続。

また家族についてはもちろんだけれど、それ以上に「近代」という時代についての理解が、本書によってかつてなく深まったことが有意義だった。幕末までの近世と、明治以降の近代は、ひとびとにとってどう違っていたのか。それを「家族」という観点から説明することで、当時のパラダイムシフトの大きさを実感出来るようになる。ついでに、夏目漱石が言う「明治の精神に殉死」というよく分からない観念も、本書によって何が言いたかったのかが腑に落ちる。

歴史を学んだだけでは今までぴんと来なかったものごとが、社会学によって深く理解出来るようになるなんて、なんて面白いのかと興奮しました。

542ページと長く、けして易しい本では無いものの、多くの人に読んでほしい価値ある一冊。

本書で紹介されていた文化人類学者の梅棹忠雄、映画評論家の池田忠雄の著作もとても気になる。

 

荻原規子『白鳥異伝』

荻原規子好きを自称しておいて、じつは勾玉三部作は『空色勾玉』を20年前に読んだきりでした。たしか12歳くらいのときに読んだのですが、当時では力量が足りず読みこなせなかったんです。

34歳で読む『白鳥異伝』は、やっぱり10代で読んだほうがめいっぱい楽しめただろうな~~~~という口惜しさがありつつも、エンタメ作品としての完成度が高すぎて、夢中で読破しました。面白かった~!!!

主人公の遠子と小倶那の関係性が、荻原作品でいちばん好きな『西の善き魔女』のフィリエルとルーンの関係と相似していて、フィリエルとルーンの元ネタここやん!!! と一人でめちゃくちゃ盛り上がっていました。遠子と小倶那の関係性を、さらに高次に昇華したものが、フィリエルとルーンなのでは…?

けれど『白鳥異伝』には、これまで読んできた荻原規子作品にはいないキャラクターがいました。そう、伊津母の菅琉です。まさかこんなにも格好良い、フィジカル系ど正統イケメンキャラクターを荻原作品で見られるとは意外でした。作者自身にとっても意外だったというのがまた面白い。

『白鳥異伝』を読んだあとは当然のように『西の善き魔女』再読熱が生まれ、久しぶりに睡眠時間を削ってまで読みふけり、一週間ほど荻原規子作品の確かな面白さに熱中していました。『薄紅天女』も読まないと。

 

池上彰佐藤優『新説日本左翼史 戦後左派の源流1945-1960』

平成生まれで学も無く、ずっと狭い社会で生きてきて、コロナを機にようやく政治に関心を持つようになった私には、つねづね疑問に思っていたことがありました。

なぜ日本共産党って、私の親世代くらいの人間からめちゃくちゃ嫌われているんだろう、ということです。

日本赤軍連合赤軍なる極左暴力集団が70年代に色んなテロ事件を起こしたというのはなんとなく知っているけれど、その組織と日本共産党は別だし、今の政党で明確に戦争反対、平和主義を訴えているのは日本共産党だから、左翼とは平和主義という意味なのかとすら思っていたわけです。

ということで、池上彰さんの本で、しかも対談なら読みやすいかと考えて本書を手に取ったのですが、上記のように左翼についてまるで無知の状態で読むと、けっこう苦戦するくらい難しかった。

そもそもの左翼・右翼の意味も、本書でようやく知ってちょっと驚きました。今の日本では左翼と右翼の本来の思想が逆転したり、混じり合ったりしていて、これでは誤解するのも無理はないとも思ったり。

また、日本共産党が誕生した1922年の5年前に、世界で初めて社会主義国家が樹立することとなったロシア革命があり、その革命は19世紀に生まれたマルクス主義が大元になっている、という体系もようやく理解しました。とはいえ私はマルクス主義についてもまったくの無知なので、根本的なところがいまひとつ分からないままの読書になったと感じています。

しかしそもそもの、なぜ私の親世代、というか私の母親は日本共産党をタブー視しているのか、については、もしかしてわりとガチで新左翼極左暴力集団)を傅育した日本社会党日本共産党を混同しているのでは…? という疑いを覚えました。そんな誤解が起きてもおかしくないくらい、変遷がややこしいものだったので。

60年代以降の左翼史は続刊に書かれてあるというので、マルクス主義についてのわかりやすい本を読んでから、また続きを読もうと思います。

 

小川哲『地図と拳』

『しろがねの葉』とともに、第168回直木賞を受賞しながら、山田風太郎賞をも受賞した、ノリに乗っている一冊。640ページくらいある鈍器本でもあります。

とはいえ『白鳥異伝』も610ページくらいあったので、そこまで恐れることはないはずなのに、鈍器本にしては『白鳥異伝』のように読む者をひきずりこむような吸引力が無く、一週間以上を使ってゆっくり読みました。けして面白くなかったわけではなく、半世紀という時間をかけて生まれ、そして消えた満州の架空都市の時間を、重厚ながらも淡々とした筆致で描き切っているがゆえに、じっくり読まざるをえない大作でした。

満州の架空都市が縦糸なら、横糸を成す人間たちもまためっぽう面白い。これだけ面白い小説でありながらも、物語が著者の計画からちっともそれていなさそうなところが、作家としての力量を思わせます。小川哲さんが今後の10年でどんな小説を生み出すのか、ものすごく楽しみ。

 

今月は読んだ本は冊数は少ないものの、色んな意味で重量級の本ばかり読んでいました。こういう月があってもいいな。

 

 

今月の反省とか

5月は家で映画を3本観るという目標を立てていたけれど、1本しか観られなかった。そんなに無理なものなのか、とびっくり。たとえその日はもう本を読む気がなくとも、読んでいる本がまだ途中だと、なかなか本をやめて映画を観る気になれない。これが映画館だと行けるのに、家だとそれが出来ないのは、気持ちや習慣の問題なのかな。ちなみに観た映画は『NOPE』で、予想外にどうぶつ映画で面白かった。

6月は初めてのドライブ旅行を予定している。楽しみ!